院長コラム
肥満と産婦人科関連の疾患
“肥満”が生活習慣病をはじめ、様々な病気のリスクを高める事は、皆さんご存じのことと思います。
それは、産婦人科領域の病気に関しても例外ではありません。
今回は、「産婦人科の実際 2026年3月号」(金原出版株式会社)を参考に、肥満が関係する産婦人科関連の疾患について情報共有したいと思います。
思春期~性成熟期女性:月経異常・不妊症
最近、思春期のやせが無月経の原因になっていることが注目されていますが、反対に肥満女性も無排卵や月経不順といた月経異常の頻度が高いことが知られています。特に内臓脂肪の増加が、様々なホルモンの流れに悪影響を及ぼしていることが分かってきました。
特に、排卵障害をきたすことで知られる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の4人に1人は肥満女性であり、月経不順がみられる女性の体重管理は非常に重要です。
さらに、肥満は排卵障害をきたすだけでなく、卵子の質の低下や子宮内膜環境の異常にも関与しており、不妊症のリスクにもなっています。
周産期女性:母体の合併症・新生児異常
肥満は、妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群などの周産期合併症のリスクを高め、子宮の収縮不良により分娩が長引く事も知られています。
そのため、吸引・鉗子分娩や帝王切開率が上昇し、産後も帝王切開後の創部感染、深部静脈血栓症、産後出血のリスクが高まります。
また、胎児の発育異常(大き過ぎたり、小さ過ぎたり)、形態異常(先天性心疾患など)と母体の肥満との関係も指摘されています。
更年期~シニア世代:動脈硬化・子宮体がん・卵巣がん
女性ホルモンのエストロゲンは、血管をしなやかにし、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす働きがあります。しかし、閉経後はエストロゲンの分泌が低下するため、動脈硬化や脂質異常症のリスクが高まります。もし、肥満女性がそのまま閉経を迎えてしまうと、これらの病気のリスクは更に上昇し、脳卒中・心筋梗塞など重大な病気になる可能性が高まります。
また、子宮体がんは肥満度が高くなればなるほど、発症率が増加することが知られています。卵巣がんについても、種類によっては肥満が発症リスクを高めると報告されています。更に、これらのがんに対して手術を行う場合、麻酔のトラブルや静脈血栓塞栓症といった合併症のリスクが高くなります。
以上のように、肥満が様々な産婦人科関連の疾患のリスクを高めることは明らかです。
一方、肥満を改善することで、これらのリスクを減らすことも期待できます。
全ての世代の女性にとって、肥満の治療・予防のため、「バランスのとれた食事」「適切な運動」といった生活習慣の見直しは非常に大切です。