院長コラム

月経困難症治療薬である低用量ピルによって、長期間月経を止める意味

月経困難症の治療として、低用量ピル(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬:LEP)を用いる事が多くなってきました。
月経困難症の要因の一つとして、子宮内膜組織から分泌される痛み物質(子宮筋を収縮させる物質)の影響が知られていますが、LEPには子宮内膜組織の増殖を抑える作用があり、痛み物質の産生量自体を減少させるため、月経痛の軽減が期待できます。
このようなLEPには、120日間あるいは77日間まで実薬(ホルモンの成分が入っている錠剤)を連続服用することで、月経を長期間止める薬剤があります。
一方で、4週間に一回、あえて月経様の出血(消退出血:ホルモンの成分が入っていない錠剤の服用や休薬による“見せかけの月経もどき”)を起こさせる飲み方(周期服用)のLEPもあります。
どちらを選択するかは、ご本人のご希望や目的によって変わりますが、当院では原則的に連続服用の薬剤を第一選択としています。
今回は、当院の考える「LEPの連続服用によって、あえて長期間にわたり月経を止める意味」についてお伝えします。

(1)月経がなければ、月経困難症もなくなる
わざと4週間に一回出血を起こさせる周期服用でも、出血時の月経痛は軽快し、出血量も減少するため、月経困難症の治療効果はもちろん、過多月経にも有効です。
とは言え、人によっては、あるいは周期によっては、月経痛様症状や出血増量がみられる場合があります。
その点、連続服用の場合、副作用としての子宮出血を除けば、基本的に月経はないため、月経困難症・過多月経もなくなります。

(2)血中ホルモン濃度の急減に伴う月経前症候群(PMS)の予防
PMSの要因の一つに、月経前の血中エストロゲン・黄体ホルモン濃度の急減が指摘されています。
周期的に出血を起こさせるLEPは、出血前に休薬あるいはプラセボ(ホルモン成分の入っていない偽薬)服用により、どうしても血中ホルモン濃度が減少することになり、PMS様の症状がみられる場合があります。
一方、連続服用であれば、飲み忘れや腸炎などの場合を除き、原則として血中ホルモン濃度は一定に保たれますので、PMSの予防効果も期待できます。

(3)子宮内膜症の予防
子宮内膜症は、子宮内腔以外の場所に子宮内膜に似た細胞が存在し、それが増殖・出血を繰り返すことで、激しい月経痛・月経期以外の下腹部痛や腰痛・不妊症といった様々なトラブルを引き起こす病気です。
実は、子宮内膜組織を含む月経血は、一部卵管を通って腹腔内にばらまかれ、腹膜や卵巣に付着し増殖することがあります。これが、子宮内膜症の要因の一つと考えられています。
エビデンスはありませんが、月経の回数は少なければ、月経血が腹腔内に逆流する頻度も少なくなるため、将来子宮内膜症になるリスクが減少すると考えています。

当院では、120日まで連続服用が可能な「ヤーズフレックス配合錠」や、77日間服用が可能な「ジェミーナ配合錠」を処方することが多いのが現状です。
ただし、最近処方することが増えている、血栓症のリスクが少ない「アリッサ配合錠」は、4週間に一回出血を起こさせる周期服用の薬剤です。
今後も、連続服用と周期服用の特徴や意味合いを説明し、ご本人のご希望やライフスタイルに沿って、治療薬を選択して参ります。