院長コラム

月経困難症の年代別薬物療法 ~思春期編~

月経困難症には、子宮筋の過緊張などが原因の「機能性」と、子宮内膜症などの病気が原因の「器質性」があります。
思春期の月経困難症は機能性が多いですが、10代から月経困難症が強い女性は、将来子宮内膜症になりやすいことが知られています。
今回は、「臨床婦人科産科 2025年7月号」を参考に、月経困難症に対する思春期女性の薬物療法について、情報共有したいと思います。

思春期(18歳未満)は、月経痛の治療と子宮内膜症の予防が必要
中高生を対象とした調査によると、約7割に月経痛がみられ、そのうち35%が市販薬を服用していましたが、40%以上は何も対処していなかったそうです。
思春期の機能性月経困難症に対する治療薬として、痛み物質の産生を抑制するロキソニン錠などの消炎鎮痛剤や、痛みを抑制する神経の働きを活性化するカロナールを使用することがほとんどです。しかし、それだけでは月経痛が改善しない方も大勢いらっしゃいます。
また、月経血は卵管を通って腹腔内に逆流し、月経血に含まれる子宮内膜組織の一部が腹膜や卵巣に付着し、増殖することがあります。これが、将来子宮内膜症に繋がると考えられています。
そのため、思春期の月経困難症の治療として、子宮内膜症の予防も期待できる治療法「ホルモン療法」がお勧めです。

低用量ピル(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬:LEP)
ホルモン療法とは、子宮内膜を薄くし、内膜で合成される痛み物質を減少させる治療法で、現在の月経痛を軽快させるだけでなく、将来の子宮内膜症の予防(あるいは初期の子宮内膜症の治療)も期待できます。
ホルモン療法で主に使用されるのが低用量ピル(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬:LEP)です。エストロゲン成分の副作用として血栓症のリスクはありますが、一日1回の服用で排卵抑制の作用が強く、ほぼ100%の避妊効果も期待できます。
一方で、あまり若い方に使用すると、生涯で獲得する骨量が低下するとも言われています。

黄体ホルモン製剤(ディナゲスト錠0.5㎎など)
LEPと並んで使用されるホルモン剤に、黄体ホルモン製剤があります。黄体ホルモン製剤にはエストロゲン成分が含まれていないため、血栓症や獲得骨量への影響がなく、前兆のある片頭痛持ちといった血栓症リスクがある方や、初経から間もない方にお勧めです。
ただし、一日2回の服用が必要である事や、排卵抑制の作用がLEPほど強くないため、避妊のためにはコンドーム使用が必要になる事も注意が必要です。

鎮痛剤やホルモン剤のほかに、子宮筋の緊張をほぐす鎮痙剤(ブスコパン錠)、漢方薬(芍薬甘草湯:シャクヤクカンゾウトウなど)を使用することもあります。
当院では、14歳未満の若年者や、血栓症リスクが心配な方には黄体ホルモン製剤を処方し、血栓症リスクのない14歳以上の方にはLEPを第一選択としています。
月経困難症が強く、日常生活に支障をきたすのであれば、我慢せずに是非婦人科クリニックをお訪ね下さい