院長コラム
月経前症候群(PMS)・月経前不快気分障害(PMDD)に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
月経前3~10日前から出現する多彩な精神症状・身体症状をPMSといい、特に精神症状が重症になったものをPMDDと考えられています。
その治療として、低用量ピルや漢方薬を使用することが多いですが、精神症状に対してはSSRIを使用することも少なくありません。
今回、「産科と婦人科」(2024年8月号)を参考に、PMS・PMDDに対するSSRIの使い方や注意点について、情報共有したいと思います。
PMDDに対してSSRIは有効
SSRIは、“幸せホルモン”とも呼ばれる「セロトニン」という脳内伝達物質を高める抗うつ薬です。
様々な研究から、特に精神症状が強いPMSや、日常生活に支障きたすほどの著しい精神症状のPMDDの場合、SSRIが非常に効果的であると言われています。
また、PMDDの患者さんの90%以上に月経関連片頭痛が認められ、約10%の方が前兆(目がチカチカするなど)のある片頭痛がみられるそうです。
前兆のある片頭痛は血栓症のリスクであるため、そのような方には低用量ピル(エストロゲン製剤)は使用できません。
その点、SSRIは血栓症のリスクを上げないため、多くのPMDDの方に対し比較的安心して使用できる薬剤です。
「間欠療法」が主流だが、「頓服療法」は効果不良
うつ病などでSSRIを使用する場合は、毎日継続して服用する「継続療法」が行われるようですが、月経前のみ精神症状が出現するPMS・PMDDに対しては、「間欠療法」が望ましいようです。
間欠療法とは、黄体期(排卵日ごろ~次回月経開始日ごろ)のみ服用し、月経開始から次回排卵までの間は休薬する、といった服用方法です。
継続療法でも悪くはありませんが、より身体的・経済的に負担の少ない間欠療法が主流と考えられています。
ただし、精神症状が出ている時だけ服用する「症状出現日服用療法」、つまり“SSRIの頓服療法”ではあまり効果が期待できないため、当院ではお勧めしていません。
精神疾患の月経前増悪(PME)は精神科医と相談
PMDDと思われている方の中には、もともと精神疾患をお持ちで、月経前に症状が増悪する「PME」の方いらっしゃるかもしれません。
原疾患である精神疾患の中には、SSRI服用により、かえって予後が悪化することもあるそうです。
したがって、月経前以外の月経周期の時期でも何らかの精神症状がみられる方や、SSRIの効果が不良である方は、メンタルクリニックを受診され、精神科的診察を受けるようにしましょう。
PMS・PMDDの患者さんの中には、婦人科でホルモン療法や漢方療法を行うものの、精神症状があまり改善しない方もいらっしゃるかもしれません。
反対に、メンタルクリニックで向精神薬を処方されている患者さんの中には、月経前の精神症状増悪が改善しない方もいらっしゃるかもしれません。
精神症状が強いPMSやPMDD、PMEの方は、是非婦人科医と精神科医の2人をかかりつけ医として持ち、適宜ご相談されることをお勧めします。