院長コラム

月経前症候群(抑うつ、いらいら、乳房痛、下腹部痛など)が辛い方へ

生殖年齢女性の約70~80%の方が、月経前に何らかの心身の変調を自覚しているといわれています。
更に、日常生活に支障をきたし、治療が必要と思われる方は、生殖年齢女性の5~8%いらっしゃるともいわれています。
今回は、月経前症候群(PMS)について説明します。

 

 

PMSとは?

排卵頃から月経まで続く精神症状あるいは身体症状で、月経の開始とともに軽減や消失するものを月経前症候群(PMS)といいます。

原因はいまだ不明ですが、排卵後の黄体という組織から分泌される黄体ホルモンや社会的・精神的ストレスの影響などが考えられています。

 

 

症状は?

症状は、いらいら、憂うつ、怒りっぽいなどの精神症状、下腹部痛、頭痛、乳房痛、浮腫などの身体症状が特徴的です。

ちなみにアメリカでは、「過去3ヶ月以上連続して、月経前5日間に症状が現れ、月経開始後4日以内に軽快し、13日目まで再発しない」ことがPMSの診断基準となっています。特に精神症状が主体で強い場合には、月経前不快気分障害(PMDD)といわれています。

 

 

薬物療法

日常生活に支障をきたすほどの症状が見られる場合には、薬物療法を行います。
乳房痛、頭痛など疼痛が主体の時は、「ロキソニン」などの消炎鎮痛剤を屯用で用いることもありますが、薬剤療法の柱は以下の三つです。

 

1) 低用量ピル(OC)または低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)

排卵後にPMSを認めることから、排卵を抑えるOC・LEPを用いることがあります。

避妊をご希望の方にはOC、月経困難症もみられる方には、その治療を兼ねてLEPを処方しています。

 

2) 抗うつ薬

精神症状が主体である方に対しては向精神薬が用いられますが、中でも選択的セロトニン取り込み阻害剤(SSRI)を第1選択としています。

当院では主に「レクサプロ」を使用しており、排卵の時期から月経開始頃までの約2週間服用して頂くことが多いです。

 

3) 漢方薬

「加味逍遥散」「抑肝散」などを処方することが多く、PMSを認める期間だけでなく、ある程度長期にわたり、連続して服用して頂いております。

 

 

理由がはっきりしないのに、月経前に心身の変調をきたす方は、“症状日記”をつけることをお勧します。
どの時期に、どのような症状が現れるかが分かりますので、診療の助けになります。
是非受診の際にお持ち下さい。