院長コラム

新成人女性の皆様へのメッセージ(1) ~HPVワクチン接種・子宮頚がん検査を受けましょう~

2019年、全国で男性が64万人、女性は61万人、合計125万人の方々が新成人になられます。
今回は、これから新しく成人となる、輝かしい未来へ羽ばたく女性に向けて、産婦人科医としてメッセージを贈ります。

 

 

○ HPVワクチンを接種しましょう

子宮頚がんは、セックスによって感染するヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、発がん性が高いハイリスクHPVが原因です。現在わが国では、特に悪性度が高い16型・18型のハイリスクHPVを予防するワクチン二種類が接種可能です。これらのHPVワクチンを半年で3回接種することで、約60-70%の子宮頚がんを予防することが可能です。2

HPVワクチンは、2013年から中学1年から高校1年までの女子に対しての定期接種ワクチンに指定されていますので、すでに接種された方も多いかと思います。しかし、2014年に厚生労働省が積極的に接種を勧めなくなってから、ワクチン接種率が激減したため、20歳の時点で接種を受けたことがない女性も少なくありません。

セックスを経験する前にHPVワクチンを接種することが一番望ましいですが、セックス経験後でも接種は予防に有効です。確かに重篤な副反応(広範囲の痛みや運動障害など)は5万接種に1回の頻度で見られますが、HPVワクチンに特有な反応ではなく、非常に稀であり、国の救済制度の対象にもなります。一方メリットとして、HPVワクチンの接種により、10万人あたり約800名が子宮頸がんになることを回避でき、約200名が子宮頸がんによる死亡を回避できるといわれています。

もし将来、子宮頚がんになってしまった場合、進行具合によっては子宮を摘出する必要があり、もし妊娠前に子宮摘出されれば、もちろんその後妊娠することはできません。もし、がんの手前である前がん病変の場合であっても、子宮の出口を円錐状に切除することが必要です。その場合、子宮が残っているため将来妊娠することは可能ですが、流早産の危険性が増すことが知られています。

未成年のうちは、お母様など保護者のご意向で接種するかどうかを判断していたと思います。しかし成人してからは、メリットとデメリットをご自身で検討し、自らの責任と意思でワクチンを接種するかどうか判断することになります。産婦人科医としては、自分自身を守るため、そして将来の赤ちゃんを守るため、早めにHPVワクチンを接種頂く事を強くお勧めします。

ちなみに当院では、HPVワクチン費用は1回あたり20,000円前後であり、合計3回の接種で50,000~60,000円になります。また、接種した後、30分間副作用の有無を確認してからお帰り頂いております。

 

 

○ 子宮頚がんの定期検診を受けましょう

残念ながら、HPVワクチンを接種しても完全には子宮頸がんを防ぐことはできません。ハイリスクHPVのうち、16型と18型以外のタイプのHPVに感染した場合は、子宮頸がんに進行する可能性があります。そのため、20歳以上のセックス経験者は、HPVワクチン接種の有無にかかわらず、定期的に子宮頸がん検査を受けることが大切です。

ハイリスクHPVに感染した方の約90%は自分自身の免疫力でウイルスを排除しますが、約10%の方は感染が持続します。その後、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成、上皮内がんと進行し、最終的に子宮頸がんとなります。軽度異形成の1%、中等度異形成の10%、高度異形成の20%が子宮頸がんへ進行するといわれているため、軽度から中等度異形成の早い段階で細胞異常を見つけることが重要になります。

子宮頸がん検査によって、子宮頸がんの早期発見だけでなく、ごく初期の軽度異形成の段階で細胞異常を見つけることが可能です。実際のがん検査では、ブラシなどで子宮頚部の細胞を採取しますが、通常はほとんど痛みがなく、数秒で終わります。国では2年に1回の子宮頸がん検査を進めていますが、世田谷区の受診券(自己負担800円)は20~40歳まで年に1回の利用が可能です。

 

 

HPVワクチンの一次予防と子宮頸がん検査の二次予防は、子宮頸がん予防の車の両輪です。これら予防には、「費用」「時間」「労力」が必要になりますが、これらは将来の健康的な自分と元気な赤ちゃんに対する、とても有意義な“投資”とお考え頂ければと思います。