院長コラム

性器ヘルペスの症状と治療~パートナーや家族にうつさないために~

性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス(1型または2型)の感染により、性器やその周辺に潰瘍や水ぶくれ(水疱)ができる性感染症の一種です。
通常命にかかわるようなことはありませんが、一旦感染すると神経に潜伏するため、ウイルスを体から完全に除去することはできません。
しかし、症状が出ても適切に治療すればウイルスの増殖を抑え、症状を軽快させ、治癒までの期間を短縮することができます。
今回は、性器ヘルペスを疑う症状、現在主流になっている治療薬、他人への感染を防ぐ方法について説明します。

 

 

性器ヘルペスを疑う症状

初感染で初発の典型例では、性的接触などの後、2~10日間の潜伏期間をおいて、発熱や倦怠感などの全身症状を認め、外陰部周囲の浅い潰瘍や水ぶくれのような水疱性病変が多発し、強い痛みを伴います。足の付け根のリンパ節の腫脹や圧痛、排尿障害がみられることもあります。

再発例や非初感染初発例(以前にウイルス感染しましたが、症状がみられたのは今回が初めて)の場合は、比較的症状は軽く、外陰部、殿部、大腿部に小さい潰瘍や水疱が数個見られるだけのこともあります。また、軽度疼痛、掻痒感、違和感のみでおさまる方もいらっしゃいます。

 

 

性器ヘルペスの治療薬

性器ヘルペスの治療は、抗ヘルペス内服薬による全身投与が主体になります。軟膏は内服薬の補助として併用するか、あるいは妊娠初期の妊婦さんに対する第一選択として用います。ちなみに、妊娠中期以降の妊婦さんは抗ヘルペス薬の内服が可能です。

○初感染初発:
バルトレックス錠(500mg)
1回1錠1日2回 5~10日間 内服

ファンビル錠(250mg)
1回1錠1日3回 5日間 内服

○ 再発・非初感染初発:
バルトレックス錠(500mg)
1回1錠1日2回 5日間 内服

ファンビル錠(250mg):再発頻度が年間3回以上
1回4錠  12時間あけて2回 内服

○再発抑制:再発頻度が年間6回以上
バルトレックス錠(500mg)
1回1錠1日1回 原則1年間 内服

○ 軟膏:アラセナA軟膏 1日数回 局所塗布

 

 

感染を防ぐためのルール

○ 性器に症状が出ている間はセックスやオーラルセックスは控え、口唇ヘルペスの症状があればキスもしないように。

○ 性器に症状が出ていない時でも、妊娠を望んでいなければ、性交時(オーラルセックスの時も)必ずコンドームを使用しましょう。ただし、コンドーム使用でも100%避けることはできない旨、ご了解下さい。

○ 患部を触った後は手洗いをし、バスタオルの他人との共有はやめましょう。ただし、お風呂(湯船)で感染することはほとんどありません。

○ お尻に症状が出ているときは、トイレの便座にウイルスが付着するのを防ぐため、紙を敷くなどして、直接お尻が便座に触れないようにしましょう。

 

 

性器ヘルペス合併妊婦さんの分娩様式

陣発、破水、計画分娩など分娩目的で入院された時の診察で、外陰部に浅い潰瘍や水疱などヘルペス様の病変がみられた場合は、母児感染の可能性を少しでも減らすために帝王切開となります(当院分娩予定の方は他施設へ母体搬送となります)。ただし、帝王切開でも100%新生児へのヘルペス感染を防ぐことはできない旨、ご了解下さい。

また、再発または非初感染初発の妊婦さんで、発症から1週間以上が経過し、分娩時に外陰部病変が消失している場合は、経腟分娩が可能です。

 

 

1回でも単純ヘルペスに感染した方であれば、疲労や体調不良、ストレスによる免疫力の低下が再発を招きます。栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠・休息、そしてストレスの軽減に心がけ、免疫力を落とさないようにしましょう。
ちなみに当院では、疲労回復や免疫力向上のため、補中益気湯などの漢方薬やラクトフェリン(母乳などに含まれるタンパク)といったサプリメントによるサポートにも取り組んでいます。