院長コラム

性交経験前にHPVワクチンを接種しないと、30歳以上になったら面倒なことになるかも。

HPVワクチン(子宮頚がんワクチン)の重要性・必要性について、以前のコラムでも説明しましたが、ワクチンを接種することで子宮頚がんのリスクが減ることは、ほぼ皆さんご理解されていると思います。
しかし、「毎年子宮頚がん検診を受けて、子宮頚がんの手前の段階である異形成の状態になったら手術すればいい」とお考えの方も多いかもしれません。
今回は、たとえ軽度から中等度の異形成であっても、かなりストレスが多い人生になるのではないか、というお話をします。

 

 

軽度異形成になった場合のストレス

軽度異形成が高度異形成以上の病変に進展する可能性は約15%、子宮頚がんまで進む可能性は約1%といわれています。自然に直る可能性も少なくないため、ガイドラインでは治療は不必要で、原則として6ヶ月ごとの細胞診で経過観察することになっています。

逆に言えば、軽度異形成が継続して認められる方の場合、6ヶ月ごとのがん検査が一生続くかもしれない、ということです。

軽度異形成である30歳未満の若年女性の場合はおよそ90%が消退するといわれていますが、30歳以上になって軽度異形成が確認されている場合は、将来的に中等度異形成以上に進展する可能性も否定できません。

頭では「子宮頚がんにまで進展する可能性は低い」と思いながらも、心の奥では「子宮頚がんになる確率1/100」に怯えながら生活することは、心身にとって大きなストレスになるのではないでしょうか。

 

 

中等度異形成になった場合のストレス

中等度異形成の場合、約10%が子宮頚がんに進行し、高度異形成以上の進展率も約25%となります。それでも、相当数は消退するため、ガイドライン上では必ずしも治療の必要はなく、3~6ヶ月毎の細胞診とコルポスコピー併用で定期健診を行うことを推奨しています。

確かに30歳未満の女性では消退することが多いですが、30歳以上では中等度から軽度異形成の間で推移することが少なくありません。そのため、3ヶ月ごとの定期健診を生涯の生活習慣とする必要がありますが、これもストレスといっていいでしょう。

また、条件によっては中等度異形成で手術することもできますが、将来妊娠をご希望の方はレーザー蒸散など、早産のリスクを上げない方法をとることが多く、その場合、施設によっては再発率が20%となります。

また、中等度異形成で円錐切除をした症例の検討では、術後の確定診断で上皮内がんであった率が約15%、浸潤がんであった率が約3%であった、との報告があります。

そこで、将来妊娠を希望しているけれど、がんが心配であるため、あえて円錐切除を行うと、妊娠した際には、常に早産の危険性に怯えながらの生活になる可能性もあります。場合によっては長期入院が必要になることもあります。更に、かなり早い週数での早産児であった場合、様々な合併症をきたす可能性があるため、一生その子をサポートする必要があります。

可能性は高いとはいえませんが、これら直接的な肉体的・精神的ストレスだけでなく、様々なトラブルに対する不安感自体が非常に大きいと思います。

HPVワクチンを接種することができなかった世代で、子宮頚部異形成・子宮頚がんになってしまった方の中には「もっと早くHPVワクチンが開発されていたら、自分も性交経験前に接種ができていたのに…」と思われている方もいらっしゃるかも知れません。
現在、世田谷区の小学校6年生から高校一年生相当年齢の女子は無料で接種できます。保護者の方、特にお母様、是非ご検討下さい。
また、性交経験後であっても、26歳までの方は特に有効です。ご希望の方はまず説明致しますので、是非ご来院下さい。