院長コラム

当院の分娩誘発の適応 ~母体側の要因~

母児の健康・安全のために、陣痛促進剤を使用するケースあります。
分娩誘発の適応として、大きく母体側の要因と胎児側の要因に分けられます。
今回は、母体側の要因について説明します。

 

 

微弱陣痛

10分おきに子宮収縮が認められ、陣痛が開始したにもかかわらず、子宮収縮が弱く、分娩が進行しない時があります。

陣痛が微弱であることが、分娩が進行しない原因と判断した場合は、子宮収縮効果のある陣痛促進剤(オキシトシン点滴投与)を用います。

 

 

前期破水

陣痛が始まる前に破水することを前期破水といいます。破水から時間が経過すると、子宮内感染の危険性や羊水減少に伴う臍帯圧迫の危険性が高まります。

破水後、自然に陣痛が始まることが多いですが、一向にその気配が無い場合は分娩誘発を行います。

子宮頚管が未熟である場合は、熟化させる効果の高い陣痛促進剤(PGE2錠内服)から開始し、子宮頚管が熟化した後、オキシトシン点滴投与で促進します。

 

 

妊娠高血圧症候群

収縮期血圧が140mmHg 以上、または拡張期血圧が90 mmHg 以上の場合を妊娠高血圧症候群といいます。妊娠の状態を終了させることが、根本的な治療になるため、週数によっては分娩を誘発する方向で進めていきます。

ただし、子宮頚管が未熟であり、血圧上昇が著明な場合、あるいは蛋白尿が見られて妊娠高血圧腎症と診断した場合は、当院で分娩誘発をせずに高次施設へ紹介します。

 

 

墜落分娩予防

子宮収縮は見られないものの、子宮頚管がかなり熟化している場合、陣発や破水後に急速に分娩が進行し、自宅や車中でお産になること(墜落分娩)があります。

もちろん、母児にとって危険なお産であるため、その予防が必要になります。ご自宅から当院までの距離や来院時間によりますが、妊娠38週以降であれば計画分娩することがあります。

また、経産婦さんで、墜落分娩の既往などがある場合は、同様に計画分娩をお勧めします。

 

 

その他、妊娠継続が母体の危険を招く恐れがある場合

分娩までの時間的ゆとりがあれば高次施設に紹介しますが、母体搬送よりも当院で分娩した方が早く安全であると判断した場合は、当院にて陣痛促進剤を用います。

その他、これまで血圧は正常であったとしても、何週にもわたって蛋白尿が陽性であった場合、急に血圧が上昇し妊娠高血圧腎症に移行することがあります。したがって、当院では蛋白尿が継続している妊婦さんにも、予防的に計画分娩をお勧めしています。

 

分娩誘発の際には内容を説明し、ご納得頂いた上で承諾書に署名を頂戴しております。
不明な点がございましたら、お気軽にお尋ね下さい。