院長コラム
当院における更年期障害に対するホルモン補充療法の流れ
のぼせ・異常発汗などの更年期障害の主な要因は、卵巣機能低下に伴うエストロゲン(女性ホルモンの一種)の減少です。
そのため、更年期障害の治療としてエストロゲンを補充するホルモン補充療法(HRT)は理にかなっていると言えますが、治療にあたっては注意すべき点も存在します。
今回は、当院におけるHRTの流れについて説明致します。
子宮を有している方の全身症状
HRTの目的は低下したエストロゲンを補充することですが、エストロゲン製剤のみ長期間に投与すると、子宮内膜がん(子宮体がん)のリスクが高まることが知られています。
したがって、子宮を有している方の場合は、子宮内膜がんの予防のために、子宮内膜組織の増殖を抑え込む黄体ホルモン製剤を併用することが必要不可欠です。
当院では、50歳未満の方や最終月経から1年未満の方には、「エストロゲン製剤(内服薬・経皮剤)連日投与」に「黄体ホルモン製剤(エフメノカプセルなど)14日間周期投与」を併用することで、あえて月に一回月経様の出血を起こさせるような投与法を推奨しています。
一方、50歳以上あるいは最終月経から1年以上経過している方には、「エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤を併用持続投与」することで、出血を起こさせない投与法を行っています。
子宮摘出後の全身症状
子宮筋腫などにより子宮を全摘された方にHRTを行う場合は、子宮内膜がんの発生を心配することがないため、原則としてエストロゲン製剤のみを投与しています。
ただし、子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞、肺・膀胱・腸管などの異所性内膜症など)の治療歴がある方に対しては、内膜症病変の悪化を避けるために、あえてエストロゲン製剤と一緒に黄体ホルモン製剤を持続的に投与することもあります。
デリケートゾーンのみの局所症状
膣内の乾燥感や外陰部の萎縮といったデリケートゾーンの局所的な症状がメインの場合は、比較的作用がマイルドなエストロゲン膣錠の膣内挿入(連日または頓用)を行っています。
本来であれば医師が膣錠を挿入することが望ましいですが、毎日の通院が困難である方も多くいらっしゃるため、ご自身で挿入が可能な方の場合は、複数のエストロゲン膣錠を挿入法の説明書と一緒にお渡ししています。
HRTは更年期障害に大変有用な治療法ですが、決して万能ではなく、特に精神症状・デリケートゾーンの症状への効果が弱い方もいらっしゃいます。
そのような場合、HRTに加えて、漢方薬や向精神薬の併用や、レーザー治療(モナリザタッチ)を行う事も少なくありません。
更年期障害の悩みは人それぞれであり、当院ではこれからも、お一人おひとりに合った治療法を探って、提供できるよう心がけて参ります。