院長コラム

少産少子化の中、直視すべき医学的現実

厚生労働省が昨年末に発表した我が国の平成29年度の人口動態によると、前年97万7,000人であった出生数が、3万6,000人も減少し、94万1,000人とたっていることがわかりました。

また、平成28年度の合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子供の平均数)は1.44で、今後もあまり大きな増加は望めません。

今回は、このような少産少子化の背景にある、直視しないといけない医学的現実についてお話致します。

 

 

女性の年齢とともに不妊率は上昇

20~24歳で5%であった不妊率は、25~29歳で9%、30~34歳で15%と上昇し、35~39歳では30%、そして40~44歳では64%にまで上昇します。

つまり、35歳を超えてくると妊娠する力(妊孕性)が低下し、特に40歳を超えると厳しくなります。

また受精した場合でも、母体の年齢とともに染色体異常の発生頻度が増加します。

もちろん、不妊治療は万能ではなく限界もあるため、初めから「高齢になったら不妊治療がある」と期待しての人生設計は大変危険です。

 

 

婦人科的合併症も増加

不妊の原因の一つである子宮内膜症は性成熟女性の約10%に見られますが、不妊女性の約50%に見られます。加齢とともに、子宮内膜症の病態が悪化することも予想されます。

また、子宮筋腫は生殖女性の約20%にみられ、その発生部位や大きさによっては、不妊や早流産・難産の原因となります。そして、加齢とともに子宮筋腫が増加・増大する可能性があります。

 

 

高齢妊娠の合併症

35歳以上、特に40歳以上の妊婦さんは、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などの合併症が増加します。

これらの合併症は、母体はもちろん、胎児にとっても危険であり、医学が発達しても悲劇的な結果を迎える可能性があります。

 

 

子宮頚がんの治療によるダメージ

20歳代、30歳代に多い子宮頚部上皮内がん・高度異形成に対して、子宮頚部の円錐切除を行うことがあります。術後に妊娠した場合、頚管長が短縮しやすくなり、長期にわたる切迫早産管理が必要になったり、赤ちゃんが未熟な状態で早産になる可能性も高くなります。

もちろん、進行していれば子宮全摘する必要があるため、術後の妊娠は望めません。

 

 

以上は男女問わず、特に若い世代の方々に認識して頂きたい医学的な現実です。
これを踏まえて、各自の人生設計、キャリアプランを考えて頂ければと思います。