院長コラム

将来の妊娠に備えて、月経前のトラブルを改善しておきましょう

月経前の様々な心身のトラブルを月経前症候群(PMS)、中でも精神症状が重症なケースを月経前不快気分障害(PMDD)、精神疾患などの持病(基礎疾患)が月経前に悪化する状態を月経前増悪(PME)といいます。
最近は、PMS,PMDD,PMEを包括して月経前障害(PMDs)という分類が国際的に提唱されており、PMDsの女性は産後うつ病になりやすい、とも言われています。
今回は、「女性心身医学 2024年11月号」を参考に、妊娠前の健康管理(プレコンセプション)の立場からみたPMDsへの対処法について情報共有したいと思います。

月経困難症もみられる場合は低用量ピルを検討
月経困難症の治療薬として保険適応となる低用量ピルを「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)」といい、エストロゲン製剤とプロゲスチン製剤の合剤となります。
LEPの製剤により、エストロゲンの種類、プロゲスチンの種類がいくつか分かれています。また、投与法に関しても、長期間連続して服用する連続投与と、月に一回出血を起こさせる周期的投与があり、個々の症状や体質、生活状況などで薬剤・投与法を決めていきます。
当院では、月経前のイライラ感・易怒性が強い方にはヤーズフレックス配合錠(連続投与)、抑うつ症状・意欲低下が強い方にはジェミーナ配合錠(連続投与)、血栓症の注意が必要な方にはアリッサ配合錠(周期投与)を中心に、症状などに合わせて検討しています。
尚、LEP服用を中止してから3か月以内に排卵が再開することが多いですが、個人差もあるため、妊活のタイミングについては主治医にご相談下さい。

精神症状が強い方にはSSRI
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、“幸せホルモン”とも呼ばれるセロトニン(脳内神経伝達物質)を増やす抗うつ薬です。
思春期女性には副作用に注意が必要な薬剤ですが、精神症状がメインのPMSの方にはSSRI(当院ではレクサプロ錠が多い)単剤の使用、あるいはLEPや漢方薬(加味逍遙散・抑肝散・半夏厚朴湯など)と併用する事があります。
尚、PMDDやPMEについてはメンタルクリニック通院中の方が多いため、当院で向精神薬を処方することはほとんどなく、かかりつけ精神科医と連携しながらLEPや漢方薬で対応しています。

メンタルの不調に鉄欠乏性貧血が関与していることも
月経前のメンタルの不調や産後うつ病に、鉄欠乏性貧血が関与していることが知られています。また、貧血にまで至っていなくても貯蔵鉄が少ない状態(鉄欠乏症)であると、様々な健康被害がみられると言われています。
そもそも、バランスのとれた食生活で、正常の月経量であれば、通常女性の体は貧血にならないようにできています。
もし、鉄欠乏性貧血や鉄欠乏症がみられた場合は「異常事態」であり、食生活の見直し(鉄・蛋白質・ビタミンB群などの十分な摂取)、経血量のコントロール(LEP、止血剤などの処方)、鉄剤投与(内服または点滴投与)を積極的に行う必要があります。
ちなみに、妊娠中・分娩後は生理的に鉄欠乏になりやすいため、当院では積極的に鉄剤(比較的副作用の少ないリオナ錠)を処方しています。

そもそも、将来妊娠する・しないに関わらず、PMDsは生活の質を低下させます。
特に、家族・学校・職場など、大切な人間関係に深い亀裂を生じてしまう可能性もあります。
PMDsでお悩み方は、婦人科クリニックまたはメンタルクリニックをお訪ねされることをお勧めします