院長コラム

妊産婦さん、婦人科疾患治療中の方の新型コロナワクチン接種について

新型コロナウイルス感染拡大が止まらず、第5波に突入している中、ペースはゆっくりではありますが、全国的に新型コロナワクチン接種が進んでいます。
ただし、ワクチン接種の副反応を心配されている方も少なくありません。
今回、妊産婦さん、婦人科疾患治療中の方の新型コロナワクチン接種について、当院の考えをお伝え致します。

 

妊娠中・授乳中の接種

原則として、妊娠中どの時期であっても、接種による妊娠や胎児に与える影響はないとされています。器官形成期である妊娠13週未満に接種したとしても、胎児奇形や流産などのリスクは、接種していない方と同等といわれています。
ただし、もしワクチン接種後、胎児や妊娠経過にトラブルがあった時に、ワクチン接種と関連付けて悩まれる方がいらっしゃる可能性があります。また、つわりとワクチン接種の副反応が重なると、かなり辛くなることも予想されます。
当院では、原則として妊娠13週以降の妊婦さんに接種を勧めており、それ以前の妊婦さんの場合は、ワクチン接種が胎児や妊娠経過に影響を及ぼさないことをご理解頂いた方のみ、接種を許可しています。
授乳婦さんの場合も、ワクチンが母乳を介して赤ちゃんに影響を及ぼすことはないといわれていますので、問題なく接種できます。
尚、妊娠期、産褥期は比較的血栓症のリスクが高まる時期ですが、ワクチン接種によりリスクが更に高まるとの報告はないようです。

 

女性ホルモン治療中の接種

低用量経口避妊薬(OC)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)の服用により、血栓症のリスクがやや高まることが知られています。
ただし、妊婦さんや褥婦さんと比べてそのリスクは低く、OC・LEP服用中であっても血栓症を気にせず新型コロナワクチンを接種することができます。
また、更年期障害治療のホルモン補充療法(HRT)は、OC・LEPよりも血栓症リスクは低いため、新型コロナワクチン接種は問題ありません。

 

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンや風疹ワクチン・MR(麻疹風疹混合)ワクチンと、新型コロナワクチンとの接種間隔

新型コロナワクチンはmRNAワクチンと呼ばれる新しいタイプのワクチンであり、他のワクチン接種との間隔については、現時点で詳しい研究はあまりされていないようです。
尚、厚生労働省のHPでは、他のワクチンを接種する場合、原則として2週間は開けることが推奨されていますので、当院でもその方針を取っています。
ファイザー製ワクチンの場合、1回目と2回目の接種間隔は3週間です。したがって、HPVワクチンや風疹ワクチン・MRワクチンを接種する場合は、コロナワクチン1回目接種の2週間以上前か、コロナワクチン2回目接種の2週間以上後に接種することが望ましいと思われます。
モデルナ製ワクチンの場合は、1回目と2回目の接種間隔は4週間であるため、1回目接種の2週間後に他のワクチンを接種することも可能です。

 

基本的には産婦人科疾患の経過観察や治療中の方が、新型コロナワクチンを接種することは問題ないと思います。
ご心配な点は、かかりつけの先生にお尋ね下さい。
新型コロナウイルス感染拡大防止のためにも、当院では積極的なワクチン接種をお勧めします。