院長コラム
妊婦さんが注意すべき“ワクチンのない”感染症への対策
妊娠中の初感染が胎児に悪影響を及ぼす感染症には、ワクチンで予防が期待できるものと、ワクチン自体がないものがあります。
風疹、麻疹、水痘・帯状疱疹のウイスルに関してはワクチンが存在しているため、妊娠前に抗体の有無を調べて、抗体がなければ(もしくは抗体の力が弱ければ)、妊娠2か月前までにワクチンを接種することが望まれます。
一方、トキソプラズマ、サイトメガロウイルス、パルボウイルスB19(りんご病の原因ウイルス)にはワクチンが存在しないため、今回はこれらの感染症対策について情報共有したいと思います(参考:研修ノートNo.115 プレコンセプションケア 日本産婦人科医会)。
トキソプラズマ
妊娠中に初めて感染すると、胎児に水頭症・精神発達遅延といった先天性トキソプラズマ症が発生する恐れがあります。
トキソプラズマは猫の糞便・加熱不十分な食肉、あるいは土壌に含まれていくことがあり、口から入って感染します。
感染予防として、
・猫は室内で飼って、糞便を触らない
・加熱不十分な食肉や生貝を食べない
・野菜や果物についている土は水道水で洗い流してから食べる
・土いじりや食肉調理後は石鹸(20秒以上)と流水(十分に石鹸を洗い流す)で手洗いする
など、心掛けましょう。
サイトメガロウイルス
妊娠中の初感染だけでなく、再感染などによっても、胎児が先天性サイトメガロウイルス感染症(難聴、精神運動発達遅延など)になってしまう可能性があります。
感染している子供の尿や唾液などから感染することがあるため、
・子供の尿や唾液に触れたら石鹸と流水で手洗いし、それらが付着した玩具や家具はアルコール消毒する
・子供と食器を共有せず、子供の食べ残しは食べない
・子供とキスするときは、口や頬をさける
など、以上を注意しましょう。
更に、精液にも含まれている可能性があるため、妊娠中であっても性交時にはコンドームを着用してもらい、オーラルセックスは避けるようにしましょう。
パルボウイルスB19
りんご病(伝染性紅斑)の原因ウイルスで、妊娠中に初めて感染すると流産・胎児水腫・胎児貧血などを引き起こす可能性があります。妊娠可能年齢女性の抗体保有率は約50%と考えられており、お子さんなどの同居者が発症した場合、抗体を持っていない妊婦さんの約半数が感染すると言われています。
感染者が放出する飛沫によって感染するため、流行時には人混みは避け、外出時にはマスクを着用するようにしましょう。
感染症は100%予防する方法はありませんが、妊娠が判明したら、人混みを避け、マスクを着用し、こまめに手洗いをしましょう。
更に、生肉摂取、土いじりや猫の飼育、上のお子さんとのキスは、妊娠中だけでも控える事がお勧めです。
日々の生活の中で、以上のような「守備固め」を心がけることが、ワクチンのない感染症から母児を守る大事なポイントであると思われます。