院長コラム

妊娠を希望しているカップルは風疹抗体の確認を

2018年平昌オリンピックは閉幕しましたが、2年後の2020年には東京オリンピックが開催されます。
実はその2020年までに、厚生労働省は「風疹排除達成」を目標に掲げています。
今回は、妊娠と風疹について説明します。

 

風疹とは?

風疹とは風疹ウイルスによる感染症で、発疹、発熱、リンパ節腫脹、関節痛などの症状が認められます。
感染経路は飛沫感染で、潜伏期間は約2~3週間といわれており、感染していても症状が現れない不顕性感染が15%程度あると言われています。

 

風疹が妊婦さんに与える影響

妊娠初期に母親が風疹にかかると、胎児感染を来たし、新生児に白内障や緑内障などの眼症状、先天性心疾患、難聴など、先天性風疹症候群をひきおこすことが知られています。
先天性風疹症候群の頻度は、妊娠4~6週の感染では100%、妊娠7~12週では80%、妊娠13~16週では50%、妊娠17~20週では6%で、妊娠20週以降の感染では0%と報告されています。
また、妊娠初期に抗体を有していても、その抗体が少ない場合には、再感染の可能性もあります。

 

風疹予防のためにはワクチン接種

予防は風疹ワクチン、MR(麻疹風疹混合)ワクチンの接種です。
世田谷区では、以下の(1)から(3)のいずれかに該当する方は、お一人1回まで風疹抗体検査の補助が出ますので、世田谷区役所へお問い合わせ下さい。

(1) これから妊娠を希望する女性
(2) 上記(1)の配偶者(事実上の婚姻関係)
(3) 風疹の抗体価が低いことが判明している妊婦の配偶者

*ただし、過去に風疹抗体検査を受けたことがある方や風疹の予防接種歴がある方などは対象外になります。

 

妊娠中の予防接種は禁忌

風疹ワクチン、MRワクチンのどちらも生ワクチンであり、妊娠中はワクチンウイルスが胎児へ移行する危険性があるために禁忌とされています。
また、ワクチン接種後2か月は避妊が求められます。ただし、妊娠中の風疹ワクチン接種で胎児に障害が出たという報告はこれまでになく、仮に風疹ワクチン接種から妊娠までが2か月以内であったとしても、妊娠を中断する必要は全くありません。
尚、授乳中はワクチン接種が可能です。

 

海外への旅行・出張は要注意

最近国内で集団発生したケースの中には、海外渡航者が発端となったケースがあります。
以下のエリアは日本よりも風疹報告数が多いところですので、妊娠を考えているカップルやご家族の方は、旅行や出張に十分ご注意下さい。

人口100万人あたり10例以上の国

アラブ首長国連邦・インド・パキスタン・南アフリカ・モンゴルなど

 

これから妊娠を考えているカップルの皆さんは、将来の子供たちのために風疹抗体検査を行い、抗体価が低い方は是非風疹ワクチンを接種しましょう。