院長コラム

女性にとって皮下脂肪はとても大切です~エストロゲンと皮下脂肪との関係~

ダイエット中の女性、特に10~20代女性にとって“皮下脂肪”は目の仇であるかもしれませんが、皮下脂肪がないと女性ホルモンであるエストロゲンが分泌されず、無排卵・無月経状態となる恐れがあります。
今回、「エストロゲンと女性のヘルスケア」(メジカルビュー社)を参考に、エストロゲンと皮下脂肪との関係について説明します。

 

エストロゲンは皮下脂肪量を適正に保ちます

エストロゲンの大切な働きに、「皮下脂肪を増やす」ことがあります。
思春期前では、女の子と男の子では、あまり体型は変わりません。ところが思春期に入ると、女子はエストロゲンの影響で女性らしく、男子は男性ホルモンの影響で男性らしく体型が変わってきます。
女性が丸みを帯びた体型になる原因は、エストロゲンの脂肪蓄積作用によるものです。
一方でエストロゲンには、脂肪量が過剰にならないように抑制する働きや食欲を抑制する作用もあります。
さらに、エストロゲンによって増えた脂肪からは、「レプチン」というホルモンが分泌されます。このホルモンにも摂食中枢に働きかけて食欲を抑える作用があります。その結果、脂肪の増殖が抑えられます。
つまり、エストロゲン自身が皮下脂肪の量を適正にコントロールしている、といえます。

 

皮下脂肪から分泌するレプチンがエストロゲン分泌に不可欠

脂肪組織から分泌されるレプチンには、卵巣機能を活発にして、エストロゲンの産生を促すという働きもあります。
そして、レプチンの分泌量は脂肪の総量に比例します。
初経が起こるには、一定量のレプチン濃度が必要といわれており、適正の皮下脂肪がある事によって初めてエストロゲンが上昇し、初経を迎えることができます。
逆に言えば、皮下脂肪が少なければエストロゲンは分泌されず、月経はみられません。

 

若年女性の過度なダイエットは危険です

極端なダイエットで短期間にかなりの体重を減らすと、月経不順、無排卵・無月経に陥ることがあります。
例えば、3~6ヵ月間で体重の10%以上減量すると、皮下脂肪が失われ、血中レプチン濃度が低下するため、卵巣からのエストロゲン分泌が低下します。
思春期女性をはじめ、これから妊娠を考える性成熟女性の方は、過度なダイエットをしないようにしましょう。

 

本来であれば、摂食量が減って脂肪組織が減少すると、レプチンの分泌が低下し、その結果、食欲が亢進して脂肪を蓄積しようとします。それが自然な体の仕組みです。
ところが、ダイエットに夢中になると、どんなに体重が減少しても食欲のスイッチが入りません。これは、自然の摂理に逆らった異様な状況です。
体重減少による無月経を防ぐには、「体の声」に耳を傾けることも必要かも知れません。