院長コラム

喘息治療中の妊婦さんおよび妊娠希望の方へ

喘息治療中の女性が妊娠すると、喘息の症状が悪化する方、軽快する方、変わらない方の割合が丁度1/3ずつと言われています。
今回は、喘息およびその治療薬が胎児に与える影響について説明します。

 

 

喘息が妊婦・胎児に与える影響

妊娠17~24週頃に喘息発作が起こることが多いと言われていますが、喘息発作を起こすと母体が低酸素状態となり、胎児に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、喘息がコントロールできていないと、周産期死亡率、早産率、妊娠高血圧症候群、低出生体重児が増加することが知られています。

反対に、喘息のコントロールが良好であると、分娩・新生児への影響はほとんどありませんので、薬物療法でしっかり喘息発作を予防しましょう。

 

 

喘息治療薬と妊娠

特に使用頻度が多い、吸入β2刺激薬、吸入ステロイド薬、吸入ステロイド薬・β2刺激薬配合剤の胎児に与える影響について説明します。

(1) β2刺激薬

サルタノール、ブリカニールなどの吸入β2刺激薬は、先天奇形、子宮内発育遅延、出生時低体重をはじめ、周産期リスクとの関連はないようです。

(2) 吸入ステロイド薬

キュバール、フルタイド、パルミコートなどが用いられます。低出生体重児、早産、先天奇形などの発生率を増加させることはないと言われています。

(3) 吸入ステロイド薬・β2刺激薬配合剤

アドエアが用いられます。添付文書では有益性投与となっており、必要であれば使用可能と考えられます。

特に吸入薬は血中濃度の増加が比較的小さく、胎児への影響はもちろん、授乳による乳児への影響も少ないため、妊娠中・授乳中を通じて安心して使用できると考えられています。

喘息治療薬を小児期から長期に渡り使用している方は多いため、妊娠した際、胎児に与える影響をご心配されると思いますが、胎児への影響はほとんどないため、自己判断で中止・減量することのないよう、安心して使用継続して下さい。

 

 

当院では、喘息がコントロールされている方の分娩管理は対応していますが、予防していても頻回に発作を繰り返す方に対しては、高次施設へ紹介致します。