院長コラム

人工妊娠中絶の適応と手術に必要な同意

先日、母体保護法指定医師研修会に参加してきました。妊娠人工中絶手術を施行できる母体保護法指定医師は、定期的に研修会への参加が義務付けられています。
今回は、研修会の内容を中心に、一般女性にも是非知って頂きたいことをお伝えします。

 

 

母体保護法とは

不妊手術や人工妊娠中絶に関する事項を定め、母性の生命健康を保護することを目的にこの法律は作られました。
当院では母体保護法に則って、人工妊娠中絶を行っています。

 

 

人工妊娠中絶の適応

母体保護法の第14条には、「妊娠継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」に該当する方に対して、本人および配偶者の同意を得て人工妊娠中絶を行うことができる、とあります。

適応に関していえば、「母体の健康を著しく害するおそれのある経済的理由」の判定は医師の立場で確認することは容易ではないため、当院での手術の適応は身体的理由で行うことがほとんどです。

また、手術可能な週数は、胎児娩出時が妊娠22週未満に限られています。胎児の大きさから診断した週数が、実質妊娠22週以降の場合には中絶手術はできません。

尚、母体の健康を著しく害するおそれがないにも関わらず、「単なる希望」で中絶をすることはできません。また、胎児異常は中絶手術の適応にはならないため、出生前診断で胎児に染色体異常が見つかった場合や妊娠初期に母体が風疹に罹患してしまった場合でも、原則として中絶手術をすることはできません。

 

 

人工妊娠中絶手術に必要な同意

本人と配偶者(または事実上のパートナー)の両者の同意が必要であり、書面の記載が原則です。配偶者やパートナーが遠方にいる時はFAXでもかまいませんが、必ず本人の自署であることが条件です。

相手がわからない時やどうしても相手に連絡がつかない時には、ご本人の責任において手術を行うことができますが、あくまでも特例です。

尚、結婚している女性が、不倫相手との間で妊娠してしまった場合は、籍を入れている“夫”の同意がないと中絶手術はできません。少なくとも当院では、夫に内緒で手術することはできない旨、ご了承下さい。

また、ご本人が20歳未満の場合、当院では20歳以上のご家族・ご親族の方の同意書が必要になります。つまり、未成年者の場合は、ご家族に内緒で手術することはできません。

 

 

母体保護法は女性の健康を守る法律であり、人工中絶手術は、妊娠・出産に耐えることができない母体を守る手段の一つです。
原則として当院では、人工妊娠中絶手術を繰り返さないために、術後から低用量ピル服用などの避妊をして頂いております。
妊娠を希望しないのであれば、コンドームだけでなく、低用量ピルなど失敗率の少ない避妊法を行いましょう。
そして、もし低用量ピルを飲まないでセックスをしてしまったら、せめて緊急避妊のため、72時間以内に婦人科クリニックを受診して下さい。