院長コラム

「子宮内膜症」の治療方針

当院の診察で子宮内膜症が疑われた場合、以下のような治療方針で対応しております。

 

高次施設への紹介

各種検査で卵巣チョコレートのう胞がかなり大きい方や悪性の可能性が否定できない方、すぐに妊娠を希望されている不妊症の方に対しては、手術が可能な高次施設へ紹介します。

当院では、国立病院東京医療センター、関東中央病院、厚生中央病院、日赤医療センター、昭和大学病院などの施設と連携しております。

 

薬物療法

① 鎮痛剤

各種検査で明らかな子宮内膜症の所見が認められず、自覚症状もあまり重症でなければ、「ロキソニン」「ボルタレン」などの消炎鎮痛剤を使います。

 

② 内分泌療法

1) 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)

卵巣チョコレートのう胞がそれほど大きくない20代から30代の方に対しては、LEP が第1選択となります。

LEPは排卵を抑制し、子宮内膜組織を縮小させる働きがあります。子宮内膜を薄くすることで経血量を減少させ、その結果、子宮収縮を促す痛み物質も減少するため、月経痛の緩和も期待できます。

当院では「ルナベルULD錠」「フリウェル配合錠LD」「ヤーズフレックス配合錠」などを処方しております。中でも最近は、月経の回数を減らす「ヤーズフレックス配合錠」を使用するケースが増えてきました。

ただし、喫煙者、肥満の方、40歳以上の方などには血栓症などの副作用に注意して使用するか、他剤を選択することになります。

 

2) 合成黄体ホルモン

当院で処方することが多い「ディナゲスト」は、子宮内膜組織の増殖抑制効果や、疼痛の軽減効果が高い薬剤です。

LEPの副作用である血栓症のリスクは少なく、偽閉経療法の際にみられる更年期障害のような症状も少ないため、喫煙者や40歳以上の方も服用しやすく、長期投与も可能です。

ただし、不正性器出血が多いため、当院では他の内分泌療法を数ヶ月行った後に使用することが多いです。

 

3) 偽閉経療法

点鼻薬「スプレキュア」または月一回の皮下注「リュープロレリン1.88」で、人工的に閉経にさせる治療法です。

更年期障害や骨粗しょう症といった副作用のため、1年のうち最長6ヶ月までの使用になります。

そのため、閉経までの逃げ込みや「ディナゲスト」へのつなぎ、あるいは手術前の治療として用いることが多い治療法です。

 

自覚症状や各種検査所見、生活スタイルなどを総合的に考え、お一人おひとりに合った効果的な治療法を見つけて参ります。