院長コラム

「女性の健康週間」をご存知ですか? ~女性の健康的な毎日のために~

日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は、産婦人科医が女性の健康を生涯にわたって総合的に支援することを目指し、3月3日のひな祭りを中心に、3月1日から3月8日(国際女性デー)までの8日間を「女性の健康週間」と定めました。
今回は、女性が生涯を通じて、健康で明るく充実した日々を過ごすために、予防医学の観点からお話します。

 

 

(1)健康的な生活習慣を心がけましょう

毎日を健康的に過ごすには、できるだけ病気にならないよう予防に心がけ、定期的に検診を受けることがとても重要です。予防の基本になるのは、健康的な生活習慣であり、どの年代の女性にとっても「バランスのとれた食生活」「適切な運動習慣」が2本柱といえます。

 

○ 思春期の方

「バランスのとれた食生活」は思春期から大切で、体を作るタンパク質はもちろん、骨の成長に欠かせないカルシウム、ビタミンD、貧血予防の鉄、葉酸など、各種ビタミン・ミネラルを摂取する必要があります。また、極端なダイエットや過度な運動によって、消費エネルギーが摂取エネルギーを上回る状態が長期に及ぶと、体重が減少し、卵巣機能が低下し、排卵が止まり、月経がなくなることがあります。

 

○ 妊娠を考えている方

妊娠を考える年頃の女性にとって、適正体重を維持するために、適切な食生活と運動習慣を心がけることは、妊娠による母児へのリスク(妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、胎児発育不全、難産など)を軽減するためにとても大切です。
また、葉酸は胎児の二分脊椎予防に不可欠であるため、食事からだけでなく、少なくとも妊娠の1か月前からサプリメント(葉酸あるいはマルチビタミン)で摂取するようにしましょう。

 

○ 中高年の方

閉経前後の女性ホルモンの減少に伴い、骨密度は低下し骨粗鬆症になりやすくなります。その結果、ちょっとした転倒でも骨折しやすくなるため、中高年女性は特にカルシウム、ビタミンDを積極的に摂取しましょう。
同時に、筋力をつけ、転倒を防止するためにも、適度な運動習慣を身に付けましょう。食生活と運動習慣の積み重ねが、将来の寝たきりの予防に繋がります。

 

 

(2)予防接種は自分のため、そして将来の赤ちゃんのため

○HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン

産婦人科領域で最も重要なワクチンの一つは、子宮頚がんなどを予防するHPVワクチンです。性行為によって感染する発がん性が高いハイリスクHPVは約15種類ありますが、中でも特に悪性度の高い16型と18型に対するワクチン(サーバリックスとガーダシルの二種類)がわが国で接種可能です。
ワクチン接種の時期は、性交デビューの前が最も望ましく、世田谷区では12~15歳(小学校6年生相当年齢から高校1年生相当年齢)の女子は無料でHPVワクチン接種が可能です。「産婦人科診療ガイドライン2017」によると、それ以降も26歳まではワクチン接種は推奨されており、27~45歳の女性に対してもご希望の方には接種が可能です。

子宮頚がんになると、子宮を全摘あるいは子宮頚部円錐切除術などの手術療法が必要になります。子宮全摘すれば、もちろん将来妊娠はできませんし、円錐切除後の妊娠では早産の頻度が高くなり、その結果赤ちゃんにも悪影響が及びます。将来の赤ちゃんを守るためにもHPVワクチン接種をお勧めします。

 

○ MR(麻疹風疹)ワクチン

また、最近流行している感染症「風疹」と「麻疹(はしか)」は、母児に大きな影響を与えます。風疹は、妊娠20週までに感染してしまうと、かなり高い確率で先天性風疹症候群(白内障、心疾患、難聴など)となります。一方、麻疹は全妊娠期間を通じて、初感染の場合は流早産、胎児死亡、母体の症状悪化をきたす可能性があります。麻疹と風疹を予防するためには、MRワクチンの接種が有効です。
ただし、妊娠中はMRワクチンの接種ができず、接種後も2か月は避妊の必要がある旨、ご了承下さい。

 

 

今回は“病気にならないための予防”(一次予)を中心にお話しましたが、定期健診で病気の早期発見に務めること(二次予防)も非常に大切です。婦人科関連でいえば、20歳以上で性交経験のある方は、HPVワクチン接種歴のある方でも、少なくとも2年に1回は子宮頚部細胞診(子宮頚がん検査)を受ける様にしましょう。