院長コラム

胎盤の位置異常(前置胎盤・低置胎盤)の管理

胎盤は通常子宮内面の中央から上方に位置していますが、下方に位置している場合は位置異常として注意が必要です。
位置異常には前置胎盤と低置胎盤があり、今回はこれらの管理について説明します。

 

 

前置胎盤の管理

前置胎盤とは、内子宮口(胎児が生まれる出口)を胎盤が塞いでしまっている状態をいいます。

内子宮口を覆う胎盤の辺縁から内子宮口までの最短距離が2cm以上の状態を全前置胎盤、2cm未満の場合を部分前置胎盤、ほぼ0cmの場合を辺縁前置胎盤と呼びます。

前置胎盤の場合、出血による早期娩出が必要となるケースがあり、平均分娩週数は34~35週といわれています。

分娩様式は帝王切開ですが、癒着胎盤や多量出血に見舞われることもあるため、妊娠30週頃までには「国立成育医療研究センター」「日赤医療センター」などの高次施設へ紹介致します。

 

 

低置胎盤の管理

低置胎盤とは、胎盤が内子宮口を塞いではいないものの、その近傍にある状態をいいます。明確には定義されていませんが、臨床的に、胎盤辺縁と内子宮口の最短距離が2cm以内の状態を目安としています。

低置胎盤では、分娩時の出血が多いことが知られています。その理由として、子宮下部の筋肉が薄いことが考えられます。胎児と胎盤の娩出後、胎盤が付いていた箇所の子宮筋が急速に収縮することで、産後の出血が抑えられます。しかし低置胎盤の場合、胎盤が付いていた子宮下部の筋肉は比較的薄く、その収縮力が弱いため、産後出血が多くなると考えられています。

したがって、妊娠36~37週の時点で胎盤辺縁が内子宮口から2cm以内の場合には帝王切開が予定されることがあります。

また、低置胎盤に合併することの多い重大な異常として、前置血管が挙げられます。前置血管とは、臍帯血管が子宮下部の卵膜を横切って走る状態で、破水時に子宮下部の卵膜が破れると同時に、臍帯血管も一緒に破れてしまい、胎児側からの出血多量により胎児死亡に至ることがあります。

前置血管の頻度は1,200~5,000例に一例と極めてまれですが、前置血管の約80%は低置胎盤に合併しているといわれています。もし前置血管があらかじめ確認されていた場合は、その時点で「国立成育医療研究センター」「日赤医療センター」などへ紹介し、前置血管は認めないものの、胎盤辺縁が内子宮口から2cm以内の場合には、妊娠32週頃までに「東京医療センター」などへ紹介致します。

 

 
胎盤は、妊娠週数とともに上方へ移動することがあるため、妊娠中~後期まで胎盤の位置異常の診断は困難な場合があります。
妊婦健診の度に胎盤の位置を評価し、高次施設または帰省先分娩施設への紹介は、時期を逸せず適切に対応して参ります。