院長コラム
東京産婦人科医会主催の臨床研究会に参加して
私が所属しています東京産婦人科医会主催の講演会に参加してきました。
日本大学医学部産婦人科学分野教授の川名敬先生から「子宮頚がん検査及びHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン」について、国立成育医療研究センター女性総合診療センター女性内科診療部長の荒田尚子先生から「ブレコンセプションケア(妊娠前のヘルスケア)」について、大変有意義なご講演を伺いました。
今回は、二つのご講演の一部を情報共有したいと思います。
子宮頚がん検診(細胞診)は必ず産婦人科医の診察で
性交の経験のある女性に対して、子宮頚がん検診が子宮頚がんの早期発見・早期治療に有効であることは世界的に認められています。ただし、細胞の自己採取法では意味がなく、必ず産婦人科を受診し、産婦人科医による細胞採取を心掛けて下さい。
もし、お勤め先の職場検診や主婦健診で自己採取法を取り入れている所がございましたら、自治体の検診事業や人間ドックを利用するなどして、産婦人科施設を受診するようにしましょう。
ハイリスクHPV検査が陰性でも、不正出血・帯下増量などの症状があれば婦人科診察を
人間ドックや保険診療(細胞診でASC-US:軽度病変疑いを指摘された場合)でハイリスクHPV検査を受けたことがある方もいらっしゃると思います。その際、「陰性」との結果であれば、基本的にこの先5年間は子宮頚がんになる可能性はほとんどありません。
ただし、“ハイリスクHPV検査が陰性”は“ハイリスクHPVがいない”という意味でなく、“ハイリスクHPVの量が、ある基準に達していない”という意味です。
したがって、不正出血や帯下の増量といった症状がみられる場合は、必ず産婦人科を受診して適切な診察を受けるようにしましょう。
妊娠を考えている女性は、各種疾患の予防・治療を積極的に
赤ちゃんの二分脊椎などの奇形の原因として、妊娠前から妊娠初期にかけての母体の葉酸不足が指摘されています。せめて、妊娠を考える1か月前から妊娠12週までは、適切な食生活に加えて、葉酸サプリメントを積極的に摂取しましょう。
また、妊娠前には風疹抗体価を調べて、抗体がない、あるいは少ない方は風疹ワクチンを接種するようにしましょう。
更に、コントロールされていない内科的疾患、特に高血圧症や糖尿病なども胎児・母体に多大な悪影響を及ぼします。妊娠を考えたら必ず血圧や血糖(HBA1cなど)などをチェックし、もし異常があれば内科専門医を受診するようにして下さい。
子宮頚がん予防は「HPVワクチン接種(特に性交未経験の方)」と「適切な子宮頸がん検査(性交経験後の20歳以上の方)」です。
また、将来の赤ちゃんの健康のためには、妊娠する前のご自身の健康管理(適切な食事や葉酸サプリ摂取、内科疾患の治療、適切な体重管理、禁煙、風疹ワクチン接種など)は必要不可欠です。
「適切な時に、できる事をしっかり行うこと」
その重要性が、改めて心に刻まれた講演会でした。