院長コラム
月経に関連するトラブル
思春期に月経が始まり、閉経期に月経が終了するまで、妊娠期や授乳期を除き、月経に関連するトラブルに悩む女性は少なくありません。
特に、月経時や月経前にみられる心身の不調は、日常生活の質を下げる事が多く、積極的に婦人科を受診し治療することが求められます。
今回は月経困難症と月経前症候群について、その対策をまとめてみます。
月経困難症の症状と対策
月経中に、下腹部痛・腰痛、頭痛、下痢、食欲不振、いらいら、憂うつなど、様々な心身の不調がみられる状態を月経困難症と言います。
月経困難症には、原因となる明らかな病気がみられない「機能性」と、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などの病気が引き起こす「器質性」があり、若年女性は機能性月経困難症が比較的多く、加齢とともに器質性月経困難症が増えていきます。
治療として、鎮痛剤(カロナール錠、ロキソニン錠など)、鎮痙剤(ブスコパン錠など)、漢方薬(芍薬甘草湯、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸など)を服用することも多いですが、これらだけで月経困難症が軽快するとは限りません。
“痛み物質”は子宮内膜で合成されることから、特に機能性月経困難症に対しては、子宮内膜組織の増殖を抑制する女性ホルモン剤である低用量ピル(ヤーズフレックス配合錠、ジェミーナ配合錠など)、黄体ホルモン製剤(ジエノゲスト錠0.5㎎、IUS:黄体ホルモン放出子宮内システムなど)が奏功することも少なくありません。
器質性月経困難症に対しては、ディナゲスト錠1.0㎎やレルミナ錠(偽閉経療法)を使用することで、原因となる疾患の治療を行う事が主流です。
月経前症候群の症状と対策
月経が始まる3~10日ほど前からイライラ、抑うつ、乳房痛、腹部膨満感、むくみ、便秘などの症状がみられる状態を月経前症候群(PMS)といい、月経が始まると次第になくなっていきます。
PMSの原因として、排卵後に分泌される黄体ホルモンの影響がいわれています。そのため、PMSの治療として、排卵を抑制するヤーズフレックス配合錠などの低用量ピルが有効な場合があります。
その他、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」という脳内伝達物質を増やす抗うつ剤(レクサプロ錠など)や、加味逍遙散・抑肝散などの漢方薬を用いる事があります。
月経困難症や月経前症候群の症状や強さは、人によって大きく異なります。
まずは、バランスのとれた食事、適切な運動、良質な睡眠、規則正しい生活リズム、体を冷やさない習慣などを心掛けてみましょう。
それでも、仕事や学業、家事や育児など、日常生活に影響が出るのであれば、決して我慢せずに婦人科を受診することをお勧めします。