院長コラム

更年期障害に対する3つの薬物療法

10月24日は「メノポーズ(閉経)週間」最終日です。
ある報告によれば、女性特有の疾患による経済損失が年間約3兆円のところ、更年期症状による損失は約2兆円にも上るそうです。
そこで、今回は、更年期障害に対する薬物療法の3本柱について、日本女性医学学会の資料などを参考に情報共有致します。

1つ目の柱:ホルモン補充療法(HRT)
更年期にエストロゲンという女性ホルモンの分泌が低下することで更年期症状が出現します。
血中エストロゲン濃度が低値で安定している場合、エストロゲン製剤の使用が様々な更年期症状改善に有効であることが知られています。特に、ほてり、のぼせなどの血管運動神経様症状に対しては他の治療法に比べても有用です。
ただし、乳がんや血栓症の既往・治療中など、HRT禁忌の方がいらっしゃるので、使用に際しては婦人科主治医とご相談下さい。

2つ目の柱:漢方薬
閉経前にエストロゲン分泌が減少し始めると、月経がみられていたとしても、更年期症状が出現することがあります。
そのような場合はHRTの適応ではなく、症状や体質・体型に合わせた漢方薬が効果を発揮することも少なくありません。
もちろん、HRTに漢方薬を併用することもあり、その場合は血管運動神経様症状だけでなく精神症状の改善も期待できます。

3つ目の柱:向精神薬
更年期は女性ホルモンの低下に加えて、環境や性格の影響から、精神症状がみられることがあります。
HRTや漢方薬でもある程度軽快しますが、抑うつや不安感などの症状が強い場合、向精神薬が用いられることがあります。
当院では、“幸せホルモン”ともいわれる「セロトニン」(脳内神経伝達物質)を増やす「SSRI(選択的セロトニン再取込阻害薬)」を使用することがありますが、精神症状が強い場合には、メンタルクリニックへ紹介しております。

当院ではその他の治療薬として、自律神経調整薬「グランダキシン錠」、プラセンタ注射「メルスモン」皮下注、薬剤ではありませんがエクオール(大豆イソフラボン)サプリ「エクエル」などを併用することがあります。
ただし、薬物療法中でも、睡眠・食事・運動などの生活習慣の改善は非常に大切です。
更年期障害により生活の質が落ちている場合は、婦人科を受診し、薬物療法をご相談下さい。