院長コラム

更年期女性の“めまい”は、まず耳鼻咽喉科へ

閉経を挟んで前後5年間、合計10年間を更年期といい、女性ホルモンの低下に伴い様々な心身の不調がみられます。
更年期にみられる不定愁訴のうち、原因となる疾患がはっきりしない場合を更年期症状といい、日常生活に支障をきたす強い症状を更年期障害といって、治療が必要になります。
今回は、更年期症状の中でも比較的多くの方にみられる「めまい」について、「中高年女性のケア・アップデート」(日本産婦人科医会研修ノートNo.114)などを参考に、情報共有したいと思います。

“回転性めまい”は耳鼻咽喉科で診察を
周囲や自分がグルグル回るようなめまいを“回転性めまい”といい、体がふらつくような感じや足に地がつかないようなめまいを“動揺性めまい”といいます。
回転性のめまいの原因としては、メニエール病・良性発作性頭位めまい症・前庭神経炎といった耳の領域の疾患である可能性が高いため、まずは耳鼻咽喉科を受診されることをお勧めします。
また、めまいの原因として、脳腫瘍などの重篤な病気が隠れている可能性もあるため、脳神経内科・脳神経外科の外来へご相談されてもいいでしょう。

更年期障害としての“動揺性めまい”は婦人科でも診察を
耳鼻咽喉科や脳神経内科・外科での診察で大きな病気がなく、ほてりや発汗といった他の更年期症状と一緒に動揺性のめまいがみられる場合は、婦人科でもご相談下さい。
実は、更年期障害に対して治療効果が高いホルモン補充療法(HRT)ですが、めまいに対しては必ずしも効果的であるとは限りません。
それでも、HRTや向精神薬により他の更年期症状が軽快し、その結果めまいも軽快する場合を経験します。
尚、HRTなどでめまいの症状があまり改善しない方には、抗めまい薬(メリスロンなど)や漢方薬(五苓散・苓桂朮甘湯など)を併用することがあります。

閉経前後で過多月経がみられる方の場合、貧血がめまいの原因となっている可能性ありますので、必要に応じて血液検査・鉄剤投与も行います。
めまいは生活の質を下げる症状ですが、その原因は様々です。
当院では、婦人科の立場で診療していますが、近隣の耳鼻咽喉科、脳神経内科、脳神経外科の施設と連携し、適切な医療の提供を心がけて参ります。