院長コラム
暑い夏に更年期障害が悪化してきた方へ
閉経前後の10年間を更年期と言い、多くの日本人女性の場合、45~55歳がその時期にあたります。
この年代の女性は、卵巣機能の低下に加えて、家庭や職場での環境の変化が大きいことから、様々な心身のトラブルに見舞われやすいと考えられています。
特に暑い夏は、ほてり、発汗といった症状が悪化する傾向があるため、猛暑真っただ中の今、つらい思いをされている方も多いのではないでしょうか。
今回は「女性心身医学 2024年7月号」を参考に、更年期障害に関する情報を共有したいと思います。
更年期障害の症状は?
更年期にみられる多種多様な症状を更年期症状と言い、特に日常生活に支障をきたす場合を更年期障害と定義しています。
症状は様々ですが、大きく3つに分類することが多いようです。
一つ目は「血管運動神経症状」といい、ほてり、のぼせ、発汗などが含まれます。
二つ目は「身体症状」で、疲労感、めまい、動悸、肩こり、腰背部痛、関節痛、冷えなどがあります。
三つめは「精神症状」であり、不眠、いらいら、不安感、抑うつ気分などが挙げられます。
これらの症状は、女性ホルモンの低下だけでなく、内科疾患、精神科疾患、整形外科疾患などでもみられる事があるため、治療するにあたっては、他科の疾患がないかどうかを鑑別する必要があります。
更年期障害の対策・治療法は?
更年期症状が強くなってきたと感じたら、ご自身の生活習慣を見直すことが大切です。
バランスのとれた食生活・適切な運動習慣・良質な睡眠・ストレス解消のための休息、禁煙や節酒などは、更年期障害対策の出発点になります。
その上で、閉経前に更年期障害がみられる場合には、漢方薬、向精神薬、エクオール(大豆イソフラボンのサプリ)などから治療を始める事があります。
血液検査でエストロゲンという女性ホルモンが低値で、ほてり・発汗などの血管運動神経症状が主体の方には、ホルモン補充療法(HRT)が有用です。
漢方薬では、「当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」「加味逍遙散(カミショウヨウサン)」「桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)」の3剤が代表的な更年期障害治療薬です。
また、夏場の疲労感、食欲不振、多汗等がみられた場合、当院では「補中益気湯(ホチュウエッキトウ)」を用いることも少なくありません。
尚、HRTで治療効果不良の方、乳がんや血栓症既往などHRT禁忌の方には、漢方薬の他、当院ではプラセンタ注射(メルスモン注)も使用しています。
更年期を心身ともに健康に過ごす事は、その後に訪れるシニア期の幸せにも繋がります。
当院の患者さんの中には、宝塚歌劇団やお気に入りの俳優・歌手の“推し活”で気持ちをリフレッシュし、更年期を乗り越えている方もいらっしゃいます。
更年期障害対策として、生活習慣の見直しや薬物療法に加えて、日常に花を添えるような趣味を持たれてみてはいかがでしょうか。