院長コラム

心身の体調不良と苓桂朮甘湯

先日、精神科医であり、漢方専門医でもいらっしゃる先生の講演会に参加して参りました。
主に精神疾患に対する漢方療法のご講演であり、初めて知るお話も多く、大きな学びとなりました。
今回は、当院でも処方することがあります「苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)」について、講演内容の一部を情報共有したいと思います。

生薬の作用と適応症状
苓桂朮甘湯は、茯苓(ブクリョウ)・桂枝(ケイシ)・白朮(ビャクジュツ)・甘草(カンゾウ)という4つの生薬で構成されています。
桂枝を中心に「水分を吸収して排泄」「末梢血管の拡張作用」「抗不安作用」「動悸を鎮める作用」などの作用が、各生薬にはあるそうです。
そのため、苓桂朮甘湯を服用することで、めまい・動悸・息切れ・立ちくらみ・不安・神経質・倦怠感・頭痛・肩こりなどの症状改善が期待てきます。

苓桂朮甘湯が有効な「フクロウ型」とは?
講演会では「苓桂朮甘湯は“フクロウ型”に有効である」とのお話もありました。
フクロウ型とは、いわゆる「夜型」の事で、朝起きられず、午前中の倦怠感が強く、午後になって体調が改善し、夕方以降最も元気になるといったリズムの方を言うようです。
ちなみに、朝型の方は“ヒバリ型”、中間型の方は“フィンチ(スズメ?)型”といい、ある報告では8割の方はヒバリ型かフィンチ型ですが、フクロウ型も2割いらっしゃるとのことです。
現代社会はヒバリ型やフィンチ型に合わせた時間管理が主流であるため、フクロウ型の20%の方にとっては、生き辛い思いをされているかも知れません。

フクロウ型の特徴
フクロウ型の方に多い症状として、疲労感・倦怠感・頭痛・肩こり・胃痛・嘔気・めまい・手足の冷え・体力低下などがあります。
また、朝食は欲しくなく、休みの日は昼まで寝ていたいと思うが、夕食は美味しく食べられるようです。
講演では、女性は初めてのお子さんを出産した後に多く、産後うつに苓桂朮甘湯が有効であった方もいらっしゃるとのことでした。

私自身、比較的“ヒバリ型寄り”と思いますが、多様性を認め、公平な社会を目指すのであれば、「ヒバリ型」を必要以上に持ち上げ、「フクロウ型」の評価を下げる社会は、決して健全とは言えません。
とはいえ、現実的には、フクロウ型の方が日中の生活の質を向上するためには、苓桂朮甘湯などの漢方薬を用いる事が有用なのでは、と考えております。
当院では引き続き、お一人おひとりに適した最善の治療を考えて参りますので、お気軽にご相談下さい