院長コラム
当院の取り組みに関して、最近思っている事
これまで、当院の案内や産婦人科領域に関する情報提供などを「院長コラム」として、細々と当院ホームページ上にアップして参りましたが、今回が999本目となります。
拙い文章で読みづらいことも多かったかと思いますが、これまで多少なりともお読み頂いた方々に、心より御礼申し上げます。
今回は、以前から当院で行っている取り組みの中で、特に最近変化がみられているものについて、個人的な感想をお伝え致します。
人工妊娠診中絶薬「メフィーゴパック」
「メフィーゴパック」を当院で取り扱い始めた当初は、人工妊娠中絶処置をご希望される方の多くは中絶手術(MVA:手動真空吸引法)を選択されていました。
ところが最近は、わが国でのメフィーゴパックの安全性が広まるにつれて、当院でもメフィーゴパックをご希望される方が増えてきました。
効果についていえば、当院ではまだ10名の方にしか使用しておりませんが、そのうち9名の方は内服薬のみで妊娠中絶が完了しております。
その多くの方は2錠目服用後、3時間以内に胎嚢(赤ちゃんを含む袋)・絨毛組織(胎盤の一部)が娩出され、診察後も明らかな異常を認めず、2錠目を服用後4時間程度でご帰宅頂いております。
また、お一人の方は2錠目服用後、8時間経過しても胎嚢娩出の気配がなかったため、MVAによる手術を局所麻酔で行いましたが、メフィーゴパック2錠目の服用後9時間頃にはお帰り頂けました。
副作用としては、子宮内容娩出の前後に下腹部痛(収縮痛)がみられる事がありましたが、鎮痛剤服用で対応可能でした。
また、妊娠週数によっては子宮内容娩出の際、比較的多量の出血がみられる事もありましたが、次第に出血量は減少し、子宮内に残っている血液や妊娠組織を除去するといった追加手術・処置が必要になったことは、今のところありません。
当院でのメフィーゴパック使用経験数はまだ少ないのですが、他施設の報告などからも、患者さんにとって負担の少ないお勧め妊娠中絶法であると思います。
予期しない妊娠の対応策の選択肢として、今後は「メフィーゴパック」が主流になるのでは、と考えています。
外陰・膣レーザー治療「モナリザタッチ」
外陰部の痛み・かゆみ・灼熱感、性交痛、膣のゆるみといったデリゲートゾーンの不快症状は、中高年女性を中心にみられます。女性ホルモンの低下や加齢に伴う変化が背景にあると思われますが、ホルモン補充療法や外用剤の使用のみでは、必ずしも改善するとは限りません。
モナリザタッチは、膣壁・膣入口部・小陰唇~大陰唇の3か所にレーザーを当てて、粘膜下・皮下のコラーゲンを増やすことにより、不快症状の改善を目指す治療になります。月一回の施術を2~3回行うことが一般的で、その後は時々メンテナンスを行う方もいらっしゃいます。
当院では、これまで100名以上の方が1回目を行い、8割近くの方が2回目、半数近くの方が3回目の施術を行っていらっしゃいます。
概ね効果を実感して頂いておりますが、あまり症状が改善しない方や、施術後外陰部のヒリヒリ感が持続する方もいらっしゃるため、更に改善していく必要があると考えています。
それでも、当院では今年に入ってからモナリザタッチをご希望される方が増えており、デリケートゾーンの不快症状に悩まれているに対して、有効な一つの選択肢として広まっている印象があります。
産後ケア入院
産後のお母さんが心身の様々なトラブルを抱えている事は、多くの方々に知られるようになり、国・自治体としても様々な産後ケア事業に力を入れるようになりました。
当院では、自治体の助成を受けられていないためお安くはありませんが、当院で分娩された方、妊婦健診を受けられていた方、当院の母乳外来でケアをされている方を中心に、産後ケア入院を行っております。
現在、当院における看護スタッフはすべて助産師であり、食事や栄養指導は当院フタッフである栄養士が担当しています。
また、堤式乳房マッサージ法の認定者が4名いる事も当院の特徴であり、医師は私一人ですが、夜間・休日関わらず必要に応じて適切な薬物療法にも、ある程度対応可能です。
最近では、当院の受診歴がない褥婦さんからの問い合わせも増えており、産後ケアにお困りの方が多くなっていることを実感しています。
今後は当院でも、当院受診歴の有無にかかわらず、重篤な内科的合併症などがない方であれば、できるだけ対応したいと考えています。
当院は、こじんまりとした産婦人科クリニックであり、スタッフも多くありません。
それでも、当院が地域医療に果たすべき役割は小さくないと考えております。
地域の皆さんのニーズに少しでも答える事ができるよう、スタッフ一同精進して参りますので、今後とも宜しくお願い申し上げます。