院長コラム

子宮頚がん“3つの予防”

先日、慶応義塾大学医学部産婦人科教授の山上亘先生の講演会に参加してきました。
講演会では、婦人科腫瘍の分野でご活躍されている山上先生から「子宮がん診療」についてのお話を伺い、大変多くの事を学ばせて頂きました。
お話の中には、医療従事者以外の方々にこそ知って頂きたい情報もありました。
今回はそのうち、子宮頚がんの予防に関する内容を、私見も交えつつ、3つの観点から説明致します。

一次予防:病気にならないように
一次予防とは、病気にならないようにする事を目的とした予防です。
ほとんどの子宮頚がんは、発がん性の高いヒトパピローマウイルス(ハイリスクHPV)の感染が原因です。性交により子宮頚部に感染したハイリスクHPVが、時間をかけて子宮頚部の細胞を変化させ、次第に前がん病変から上皮内がん、更に浸潤がんへと進展していきます。
実は、女性の約8割は一生のうちで一度は感染すると言われていますが、ほとんどの方はご自身の免疫力によりウイルスを排除、あるいは増殖を抑制しています。
このような子宮頚がんの一次予防として、HPVワクチンを接種することが重要です。
ワクチン接種により、がんの原因となる多くのウイルスに対する抗体を身につける、言い換えれば「がんウイルスを迎え撃つ武器を手に入れる」ことができます。
そして、たとえ感染したとしても早々にウイルスを追い出す免疫力、つまり「防衛力」を高めるため、生活習慣の改善(バランスのとれた食事・適切な運動・良質な睡眠・禁煙など)も大切な一次予防の一つです。

二次予防:病気になったとしても早期発見できるように
二次予防とは、病気になったとしても、早期発見することで早期治療に繋げ、重症化しないようにする事を目的とした予防です。
具体的には、地域の子宮がん検診、職場の健康診断や人間ドックなどの子宮がん検査などが二次予防にあたります。
20歳以上の性交経験のある女性は、2年に一回を目途に「子宮頚部細胞診」を受けるようにしましょう。
もちろん、“検査しっぱなし”にするのではなく、検査結果をご自身で確認し、もし異常が認められ、さらなる診察・精査を指示されたのなら、適切な時期に婦人科を受診して下さい。

三次予防:病気と診断されても増悪・再発しないように
三次予防とは、病気となっても増悪・再発しないように治療を行い、リハビリテーションにより社会復帰を目指すことを目的とした予防です。
初期の子宮頚がんの場合、子宮を温存した方に対しては、再発予防だけでなく、無事に妊娠・分娩まで繋げることも、三次予防と言えるかも知れません。
進行がんに対しては、術後の化学療法・放射線療法といった再発予防はもちろん、がん治療の副作用の治療・管理も、「社会復帰の妨げになるトラブルを予めコントロールする」といった意味では、予防的側面もあるでしょう。

当院では特に、一次予防:HPVワクチン接種、二次予防:子宮頸がん検診に力を入れています。
また、これらの重要性について情報を発信・啓発することも、一次予防としての意義があります。

当院では、これまで中学校・高校の健康授業・性教育授業で「子宮頚がん予防」についてお話してきましたが、今後は成人女性に対しても積極的に情報を発信し、子宮頚がん予防の大切さを広めていきたいと思っています。