院長コラム
子宮頚がん検査の流れ
婦人科がんで最も多い子宮頚がんを予防するためには、第1次予防としての「性交経験前の子宮頚がんワクチン(HPVワクチン)接種」と早期発見のための「定期的な子宮頚がん検査」が非常に有用です。
本日は、当院における子宮頚がん検査の流れについて説明します。
(1) 子宮頚部細胞診
子宮頚部には比較的がんが発生しやすいエリアが存在します。そのエリアを中心に小さなブラシで細胞を採取し、ガラス板に塗るように擦り付け、スプレー式固定液で噴霧します。これを「塗抹標本」(従来法)といい、世田谷区子宮頚がん検診ではすべてこの方法で行ないます。ただし、性器出血が多い時には正確な診断ができないため、出血がおさまってから後日改めて検査します。
尚、出血が多少認められても検査が必要な場合もあります。そのようなケースでは、ブラシで採取した細胞をアルコールが入っている専用容器内に洗うように移します。これを「液状化検体細胞診標本」(LBC法)といいます。LBC法の方が診断の精度が高いため、今後は細胞診の主流になるといわれていますが、費用は従来法に比べて若干高くなります。
(2) ハイリスクHPV検査
細胞診の結果、ASC-US(軽度扁平上皮内病変疑い)であった場合はHPV感染が疑われます。HPVにはハイリスクタイプとそうでないタイプがありますが、細胞診だけではわかりません。そこで、ハイリスクHPVの存在の有無を確認する検査が必要になります。このハイリスクHPV検査はLBC法と同様な方法で行ないます。
(3) コルポスコピー
ASC-USでハイリスクHPVが陽性の場合や、細胞診で軽度異形成以上の病変が見つかった場合は、コルポスコピーおよび組織診を行ないます。
コルポスコピーとは、3%酢酸溶液によって子宮頚部表面を加工し、拡大鏡(コルポコープ)を用いて表面の色や血管像などを観察する検査です。コルポスコピーの所見によっては、単に異常の有無だけでなく、病変(異形成)の程度を推定することが可能な場合もあります。
(4) 組織診
コルポスコピーで異常が見られた場所から、最高病変と思われる部位を選び、1~数か所の組織を専用の器具を用いて数mm程度採取します。
採取後に出血することが多いため、綿球で短時間圧迫止血した後、止血の粉末を塗布した上でタンポンを挿入し圧迫します。
検査後5分間程度待合室で様子をみて、出血がないことを確認した後、帰宅頂きます。その日は運動や遠出は避けて頂き、6時間後にタンポンを抜去して頂きます。
タンポン抜去後も多量の出血がみられた場合は受診頂き、必要であれば吸収糸で出血部位を縫合することもあります。
細胞診で異常を指摘されたことがない方は、子宮頚がん検査は2年に1回でいいでしょう。
組織診で軽度異形成と診断された方は6か月毎に細胞診で経過観察、中等度異形成と診断されば方は3か月毎にコルポスコピーおよび細胞診で経過観察しています。また、軽度異形成、中等度異形成ともに、適宜組織診も行なっています。
尚、高度異形成以上の病変が見られた場合は、近隣の高次施設へ紹介しております。
今まで1回も検査したことがない方、ここ2~3年検査をしていない方は、まずは1回子宮頚がん検査にいらして下さい。