院長コラム
子宮筋腫治療薬「レルミナ錠」の使い方
子宮筋腫治療薬「レルミナ錠」が発売されて、約一年が経過しました。これまで1回につき最長14日分までしか処方できませんでしたが、2020年3月から14日分を超える日数を処方できるようになりました。これで、患者さんの通院の負担が少し軽減するのではと思います。
今回は、「レルミナ錠」の効果と副作用について説明した後、これまでの当院における使用経験と、これからの方針についてお話します。
「レルミナ錠」の作用と副作用
子宮筋腫は過多月経・過長月経、それに伴う貧血、下腹部痛などを引き起こす比較的ポピュラーな良性腫瘍です。そして、エストロゲンやプロゲステロンといった卵巣から分泌される女性ホルモンで増大することが知られています。
この女性ホルモンは、脳にある下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンによってコントロールされています。さらにこれらのホルモンは脳の視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)によって調節されています。「レルミナ錠」はGnRHが下垂体に働きかけることを邪魔することで、女性ホルモンの分泌を抑制し、月経を止めて、結果的に子宮筋腫を小さくします。つまり、「レルミナ錠」は人工的に閉経にさせる薬物であり、このような治療を偽閉経療法といいます。
「レルミナ錠」は人工的に閉経にさせるため、のぼせ・発汗などの更年期障害や骨量減少といった閉経後女性に認められるような症状をきたします。特に、骨量減少が著しいと、骨粗しょう症となり、骨折のリスクが高まるため、原則として6か月までしか使用できません。
当院における主な使用法
当院ではこれまで、数十例の子宮筋腫の患者さんに対し「レルミナ錠」を処方していますが、その多くは過多月経や下腹部痛に悩まされている40代後半から50代前半の周閉経期女性です。
月経が始まってから服薬を開始し、副作用に注意しながら6か月間連続して服用してもらいます。服薬開始1か月後の月経から抑えることができ、ほとんどの方が3か月毎の超音波検査で著明な子宮筋腫の縮小が確認されます。副作用は、のぼせ、発汗などの更年期障害様症状が多く、「当帰芍薬散」「加味逍遥散」「桂枝茯苓丸」などの漢方薬を併用している方も少なくありません。中には、定期的にプラセンタ注射「メルスモン」を皮下注されている方もいらっしゃいます。
6か月間使用したあと、平均40日前後で月経が再開しますが、再開後1-2回目の月経はあまり多くはありません。しかし、次第に筋腫が増大し、再び治療前のように過多月経・過長月経を来たす方もいらっしゃいます。そのような場合には、骨粗しょう症を鑑別するために骨密度を計測し、骨量が正常であることを確認します。そして、「レルミナ錠」の内服を再開するか、あるいは偽閉経療法の一つである「リュープロレリン1.88注」皮下注に切り替えるか、状況に応じて治療法を検討します。
これからの「レルミナ錠」使用法
「レルミナ錠」の利点は、1日1回服用するだけで筋腫の縮小効果が高く、翌月から月経を抑えることができる点です。
ただし、時々飲み忘れてしまう可能性があることや食前の服用であるため胃に負担がかかること、やや割高感があることなど、デメリットも見られます。
今後は、最初の14日間から1か月は「レルミナ錠」を服用して頂き、服薬終了後から「リュープロレリン1.88注」に切り替えることも検討しています。「リュープロレリン1.88注」の場合、月経時に初回の皮下注射を打ちますが、4週間後の月経は通常よりも経血量が増える危険性があります。そこで、まず「レルミナ錠」内服により、ある程度内膜を薄くさせます。すると、「リュープロレリン1.88注」皮下注射後の経血減少が期待できます。皮下注射が苦手でない方であれば、この方法もいいかも知れません。
また、女性ホルモン低下による更年期障害様症状に対して漢方療法やプラセンタ注があまり有効でなかった場合、大豆イソフラボンサプリメントの「エクオール」の服用を検討します。更年期障害様症状の改善だけでなく、骨密度低下の予防効果も期待できるかも知れません。
昨年の発売以来「レルミナ錠」は、多くの子宮筋腫患者さんの生活向上に一役買っているのではと思います。
当院では今後も、お一人おひとりの症状や体質などに合わせて、更に効果的な治療法を検討して参ります。