院長コラム
子宮内膜症に対するホルモン療法“3選”
子宮内膜症、特に卵巣チョコレート嚢胞といった病変がみられない子宮内膜症に対する治療に対しては、薬物療法が第一選択です。
多くの場合、月経困難症に対して鎮痛剤の服用から始めますが、あまり改善しない場合は各種ホルモン療法を検討します。
今回は、月経困難症を伴う子宮内膜症に使用することが多い、3つのホルモン剤を紹介致します。
低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)
いわゆる「低用量ピル」と呼ばれ、月経困難症に対して保険適応があります。エストロゲンとプロゲスチンという2種類のホルモンの合剤であり、避妊効果も高く、1日1錠の服用で排卵・月経を抑制します。
通常の月経困難症に対する効果だけでなく、「子宮内膜症に伴う月経痛、排便痛、性交痛」もある程度軽減させ、チョコレート嚢胞などの子宮内膜症病巣縮小効果も認められます。
ただし、LEPに含まれるエストロゲン成分の骨への影響や血栓症リスクを考えた場合、14歳未満あるいは40歳以上の女性に対して使用する際は、より注意が必要になります。
黄体ホルモン製剤:ディナゲスト錠・ジエノゲスト錠
エストロゲンを含まないため、初経から閉経まで比較的安心して服用できるのが黄体ホルモン製剤です。1㎎製剤と0.5mg製剤があり、前者は子宮内膜症、後者は月経困難症に保険適応があります。
1㎎製剤の場合、子宮内膜症が原因の疼痛の緩和・子宮内膜症病巣の縮小効果は高く、卵巣からのエストロゲン分泌を多少抑制しますが、更年期障害や骨粗しょう症などをあまり気にせず、長期服用が可能です。
ただし、1日1錠ずつ2回の服用が必要であり、しばらくの間、不正性器出血が持続することがあります。また、子宮内膜症病変の性質によっては、黄体ホルモン剤の効果が弱いケースもあります。
偽閉経療法:レルミナ錠
子宮内膜症はエストロゲンの働きで悪化するため、人工的にエストロゲンの分泌を抑える、つまりあえて閉経状態にしてしまう“偽閉経療法”が有効です。
最近は、1日1錠ずつ1回服用する内服薬「レルミナ錠」が主流であり、切れよくエストロゲン分泌が抑制されます。そのため、子宮内膜症治療としては、最強の印象があります。
ただし、長期にわたって使用すると、更年期障害や骨量の低下が認められるため、原則として6か月までの使用となります。
子宮内膜症は、生活の質を低下させたり、不妊症の原因になるなど、とてもやっかいな病気です。
ただし、LEP・黄体ホルモン剤・レルミナ錠などのホルモン剤を使用することで、子宮内膜症による症状を改善させることは可能です。
当院では、薬剤のそれぞれのメリットとデメリットを検討し、患者さんにとって最善と思われる治療を心がけて参ります。