院長コラム
妊婦さんも「百日咳含有ワクチン」を接種することができます
近年、百日咳の患者数が増加し、特に乳児における重症例や抗生剤が効きづらい百日咳菌の増加が問題になっております。
現在わが国では、3種混合ワクチンや4種混合ワクチンといった百日咳含有ワクチンの定期接種は生後2か月以降に行われていますが、それでは接種前の乳児の感染例・重症化を防ぐことはできません。
そこで近年、妊娠後期の妊婦さんにワクチンを接種し、母体に抗体を作ってもらい、その抗体を胎盤・臍帯を通して胎児に送り届ける「母子免疫ワクチン」が推奨されています。
2025年4月25日付で、日本産科婦人科学会から会員に向けて「百日咳ワクチンの母子免疫」についての告知がありましたので、一部情報共有致します。
成人用三種混合ワクチン(Tdap:百日咳・ジフテリア・破傷風混合)は有効だが、日本では未認可
欧米諸国やオーストラリアで、百日咳の母子免疫ワクチンとして推奨されている成人用三種混合ワクチンは、残念ながら現時点では日本で認可・販売はされていません。
Tdapを個人輸入している施設もあるかと思いますが、副反応発生時の対応などの問題もあり、あまり現実的でありません。
定期接種用三種混合ワクチンDTaP(トリビック🄬)は、妊婦さんも接種が可能で、乳児への抗体移行も確認
定期接種で使用されている小児用三種混合ワクチン「トリビック」は2018年から成人にも接種適応が拡大され、また不活化ワクチン(毒性・感染力なし)であることから妊婦さんも接種することが可能となっています。
さらに、妊婦さんへのトリビック接種によって、乳児への百日咳に対する抗体の移行が確認されています。
ただし、現時点では、トリビックの乳児百日咳重症化の予防効果は証明されていません。この点は、ご了解頂く必要があります。
「RSウイルスワクチン:アブリスボ」の場合、昨年から母体へのワクチン接種が積極的に勧奨されるようになりました。
現在、厚生労働省や学会から「妊婦さんへ積極的な百日咳含有ワクチン接種を推奨するように」との声明はありませんが、今後変わっていく可能性があります。
現在、当院ではトリビックの取り扱いはしていませんが、もし、妊娠中にトリビック接種をご希望される場合は、妊娠27~36週頃(アメリカなどでの接種推奨の妊娠週数)、小児科や内科クリニックにお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。