院長コラム

妊婦さんへのRSウイルスワクチン「アブリスボ」接種を始めました

RSウイルス感染症は、生まれたばかりの赤ちゃんからご高齢の方まで、どの年代の方もかかる可能性がある呼吸器の感染症であり、特に早産児、生後6か月未満の赤ちゃん、心臓や肺の病気がある方などは重症化する可能性があります。
近頃、母体にワクチンを接種することで、胎児に抗体を移行させて、生まれてくる赤ちゃんをRSウイルスから守る予防法が推奨されています。
令和6年11月、当院でもこのワクチン「アブリスボ」の接種を始めることに致しましたので、今回は当院での接種の流れなどについて説明します。

RSウイルス感染の赤ちゃんの30%が重症化!
乳幼児が感染した場合、約70%は発熱、鼻汁といった感冒症状が数日みられるだけで、快方に向かうといわれています。
しかし、約30%の乳幼児は気管支炎や肺炎を引き起こし、強い咳や呼吸困難など、重症化するとの報告があります。
特に、生後6か月の赤ちゃんは重症化リスクが高いため、生まれた赤ちゃんに直接抗体(RSウイルス攻撃の武器)を投与するか、母体にワクチンを接種して、お母さんに抗体を作ってもらい、その抗体を胎盤・臍帯を通じて生まれる前の赤ちゃんに送り届けることが勧められています。
当院では、後者の方法で、生まれた後の赤ちゃんを守ろうと考えています。

「アブリスボ」接種の対象と方法
接種対象は妊娠24週から36週とされていますが、妊娠28週から36週に接種された場合、有効性がより高くなるそうです。また、接種から抗体が十分に作られるまで約2週間かかることから、妊娠37週で生まれた正期産の赤ちゃんにも対応できるように、妊娠35週までには接種することが望ましい、とおっしゃる先生もいらっしゃいます。
したがって、当院では妊娠26週頃の妊婦健診でお母さんに説明し、妊娠28週から34-35週頃に、ご予約頂いた上で接種されるようお勧めしております。
接種方法は、0.5mlのワクチンを上腕の筋肉内に注射します。接種後30分は待合室で休んで頂き、問題ないことを確認した後にお帰り頂きます。

当院での「アブリスボ」接種費用
原則として完全予約制で、妊婦健診時に接種して頂きますが、健診日以外での接種をご希望の方、健診は他院で行っている妊婦さんで接種のみ当院でご希望の方にも対応しています。
〇当院通院中、妊婦健診時に接種:33,000円(税込)
〇当院通院中、妊婦健診日以外の接種:34,100円(税込)
〇他院通院中、接種のみ希望:36,900円(税込)

赤ちゃんは生後約6か月の間、自分のからだの中で十分な抗体を作ることができず、免疫機能が未熟であることが知られています。
その一方で、お母さんが持っている抗体の一部は胎盤を通過し、臍帯を通って胎児に移行します。
生まれた瞬間から免疫力を発揮するRSウイルス抗体は、お母さんから赤ちゃんへの “(母乳よりも早い)生まれて初めてのプレゼント”かもしれません。