院長コラム

妊娠中のメンタルトラブルの評価法

妊娠中にみられるメンタルトラブルは、抑うつと不安が多いといわれています。
そして、精神症状が強い妊婦さんは、メンタルクリニックでの診察や行政のサポートを受けて頂く事が望ましいと思われます。
今回は「産婦人科診療ガイドライン 産科編2023」を参考に、妊娠中のうつ病と不安障害の評価について、情報共有したいと思います。

うつ病に関する2項目質問票
うつ病のスクリーニングには、「2項目質問票」が有用であるようです。

1.過去1か月の間に、気分が落ち込んだり、元気がなくなる、あるいは絶望的なって、しばしば悩まれたことがありますか?

2.過去1か月の間に、物事をすることに興味あるいは楽しみをほとんどなくして、しばしば悩まれたことがありますか?

2つの質問への回答のいずれかが「はい」であれば、抑うつ状態の可能性が高いかも知れません。
最近、気分が晴れない妊婦さんは、妊娠初期、中期、末期に関わらず「2項目質問票」を行ってみて下さい。
もし、いずれかが当てはまる場合は、産科主治医にお伝えし、メンタルクリニック受診についてご相談されることをお勧めします。

不安障害を評価するための質問例
不安障害の評価方法はいくつかあるようですが、「GAD-7」もその一つです。
これは「この2週間、以下のような問題に、どのくらい悩まされているか」を問う質問票です。

1.緊張感、不安感または神経過敏を感じる。

2.心配することを止められない。または心配をコントロールできない。


3.いろいろなことを心配し過ぎる。


4.くつろぐことが難しい。


5.じっとしていることができないほど落ち着かない。


6.いらいらしがちであり、怒りっぽい。


7.何か恐ろしいことが起こるのではないかと恐れを感じる。


以上の項目について、全くない(0)・週に数日(1)・週の半分以上(2)・ほとんど毎日(3)を回答して頂き、10点以上が不安障害の目安になるようです。
ただし、9点以下であったとしても、チェックが入っている問題によって、仕事・家事・人間関係が困難になっているのであれば、精神科の診察が望ましいでしょう。

当院では、これまで上記の質問票は用いていませんが、助産師による面談やアンケートを妊娠中に複数回行っており、サポートが必要な妊婦さんには、メンタルクリニックへの紹介や所轄保健所への情報提供を行っております。
今後は、うつ症状や不安感が強い方を対象に、これらの調査票の活用も検討します。

これからも当院では、他職種の方々と連携して、妊産婦さんのメンタルヘルスのケアに尽力して参ります。