院長コラム

妊娠を計画したら禁酒しましょう

近年、妊娠可能な20~40代女性の全体の飲酒率は70~80%と高率で、ある調査によると20代前半女性の飲酒率(90%)が男性の飲酒率を上回ったそうです。したがって、妊娠に気付かず飲酒してしまうケースが予想されます。
今回は「小児科 2018年12月号:特集 妊婦の健康状態・生活習慣が胎児に及ぼす影響」(金原出版)などを参考に、妊娠中の飲酒が胎児に与える影響について情報を共有したいと思います。

 

 

妊婦さんの飲酒の現状

2000年に行われた我が国の全国調査では、妊娠中の飲酒経験は18.1%でしたが、2009年には8.7%に減少しました。その後、啓発活動の効果などにより2013年には更に4.3%まで減少しました。

しかし、まだ妊娠中に飲酒してしまう妊婦さんがいらっしゃいます。2013年から始まった「健康日本21(第2次)」では2022年までに妊娠中の飲酒をゼロにすることが掲げられています。

ちなみに、最小飲酒単位は1日エタノール換算で約15ml(ビールなら350ml缶1本、ワインならグラス1杯、日本酒ならコップ1/2杯)とし、この4倍を超えるものを過量飲酒としています。過量飲酒では胎児の障害のリスクは増加しますが、最小飲酒単位であっても発症のリスクがありますので注意が必要です。

 

 

妊娠中の飲酒が胎児に与える影響

妊娠初期の飲酒では特異顔貌や種々の奇形が生じる可能性があり、中期以降の飲酒では胎児発育遅延や脳の萎縮、中枢神経障害をきたす可能性があります。
このようなアルコールによる胎児障害を総称して「胎児性アルコール・スペクトラム障害」といい、以下の4つの診断カテゴリーに分けられます。

・ 胎児アルコール症候群

発達障害・顔貌奇形・中枢神経障害を認め、小頭症・口蓋裂・小鼻症などの異常所見が見られることがあります。

・ 部分的胎児性アルコール症候群

胎児アルコール症候群の特徴のうち、一部のみ認められる状態をいいます。

・ アルコール関連神経発達障害

顔面奇形は認めませんが、中枢神経の構造的・機能的な障害が認められます。

・ アルコール関連先天異常

心臓、腎臓、骨の臓器障害や聴覚障害など、臓器障害がみられます。

正確な胎児性アルコール・スペクトラム障害の有病率はわかりませんが、禁酒することで予防が可能です。

 

 

妊娠中の飲酒は“安全な量”“安全な時期”というものは存在しません。もちろん、妊娠が判明したら禁酒することは必須ですが、妊娠を計画するようになった時点で、是非禁酒するようにしましょう。