院長コラム
妊娠に適した年齢ってあるの?
初婚年齢の上昇に伴い、初産年齢も上昇しています。
家庭や学業・仕事の環境、経済的条件などにより「結婚するかどうか」「妊娠するかどうか」を決める女性やカップルも多いと思います。
今回、「産科と婦人科 2023年5月号」(診断と治療社)を参考に、生物学的な観点からの適正妊娠年齢について、情報共有したいと思います。
卵巣予備能からみると“37歳”と“50歳”が分岐点
卵巣予備能とは、卵巣に残っている卵子数の事で、年齢とともに減少することが知られています。
妊娠20週の胎児期に約700万個あった卵子が、出生時200万個、思春期30∼50万個、37歳頃には25,000個にまで減少し、その後は50歳の1,000個にまで急減し、これが妊娠可能な上限と言われています。
37歳以降では卵子の質も下がる事から「37歳までは生殖能力が比較的高く、50歳が限界」と言えます。
卵子の染色体数のトラブル(異数性)からみた分岐点は“20歳”と“37歳”
胎児の染色体異常には、卵子の染色体異数性が影響を及ぼします。
ある報告では、若年でも染色体異数性の発生率は若干高く、20∼32歳で最低、37歳頃から急増するとのことです。
以上より、染色体異常の観点からは20歳頃から37歳頃までが妊娠に適していると言えます。
女性疾患からみた生殖能力は“20歳”と“35歳”が分岐点
妊娠高血圧症候群、前置胎盤、常位胎盤早期剥離といった産科合併症のリスクは20∼34歳と比べて、35歳以上で高くなることが知られています。
反対に、19歳以下の妊娠も、20∼24歳に比べて妊娠予後は悪化するそうです。
また、婦人科がんの内、卵巣がんや子宮体がんは35∼39歳以上から増加することから、生殖能力の維持には20~35歳が妊娠に適しているようです。
卵巣予備能が残っていて、染色体異数性が少なく、女性疾患の出現頻度が少ない年齢層である「20∼35歳、せめて37歳まで」が生物学的に妊娠に適した年齢と言えます。
将来の夢や目標を描き始めている思春期の若者たち(男女ともに)にも、是非知って欲しいと思います。
自分の人生を計画する上で妊娠に適した年齢を知る事は、将来妊娠を希望するかどうかを問わず、非常に大切であると考えています。