院長コラム

女性アスリートの骨粗鬆症予防のための食事管理

女性の場合、女性ホルモンのエストロゲンは骨代謝に大きな影響を与えますが、何らかの原因でエストロゲンの分泌が低下すると骨密度が低下し、骨粗しょう症になりやすくなります。
女性アスリートは、長期間にわたる食事制限や厳しいトレーニングなどの影響で卵巣機能が低下し、エストロゲンの低下を招きやすくなります。そのため、骨粗しょう症を予防するためには、一般女性以上に食事内容に留意する必要があります。
今回は、「女性アスリートのヘルスケアに関する管理指針」(日本産科婦人科学会/日本女性医学学会編集・監修)を参考に、女性アスリートの骨粗鬆症予防のための食事管理について説明します。

 

 

1. 適正なエネルギーを食事と補食で確保する

アスリートは日々のトレーニングによって身体活動が増加しており、その増加分を1日3回の食事だけで摂る事は困難です。そのため、適切に間食を摂るなどして補食する必要があります。

特に成長期にある女性は、摂取エネルギー不足により低体重となり、骨形成が十分に促されず、正常な発育発達が妨げられる可能性があります。思春期女性のご家族や指導者の方には、十分なご配慮をお願いします。

 

 

2. カルシウム・マグネシウムなどのミネラルを十分に摂取する

骨はカルシウムとコラーゲンが主な構成成分ですが、カルシウムは日本人の食習慣で最も不足しがちな栄養素の一つです。さらに、消化管からの吸収率は他の栄養素に比べて非常に少なく、摂取したカルシウムの10~30%程度しか吸収されないそうです。また、マグネシウムというミネラルも骨形成に深くかかわっているため、その摂取に心がける必要があります。

カルシウムやマグネシウムは小魚や乳製品、小松菜などの緑黄色野菜に多く含まれているため、これらを日々の食事に取り入れることをお勧めします。特に乳製品は、カルシウムの供給源としてだけでなく、カルシウムの消化管での吸収を促進する働きがあるため、積極的に摂るようにしましょう。

 

 

3. アルコール・カフェイン・リンの取り過ぎに注意する

一方、カルシウムはアルコール、カフェインなどの利尿作用によって、尿中の排泄が増加することが知られていますので、これらの取り過ぎには十分注意しましょう。

また、炭酸飲料や加工食品に食品添加物として含まれているリンも、カルシウムの尿中排泄を増加させますので、これらの食品はできるだけ少なくしましょう。

 

 

4. タンパク質とビタミンCを十分に摂取する。

骨のしなやかな強度を保つコラーゲンは、タンパク質とビタミンCから構成されています。筋肉量を維持するためには、食事から十分なタンパク質を摂取する必要があります。ただし、過剰にタンパク質を摂取すると、尿中へのカルシウム排泄が促進されるといわれているため、適切な摂取量を心掛けましょう。

また、ビタミンCはコラーゲンを強化する重要な成分であり、その他免疫機能を助ける働きなどがあります。ビタミンCは野菜や果物に多く含まれていますが、水溶性の成分であるため体内に長く貯蔵することができず、一度に多量に摂取しても数時間で尿に排泄されてしまいます。できれば、ビタミンCを多く含む野菜や果物は、1日の中でも数回に分けて摂るようにしましょう。

 

 

5. ビタミンD・Kを十分に摂取する

ビタミンDはカルシウム代謝に大きく関わっており、魚・卵・乳製品に多く含まれています。
ビタミンKの摂取不足は骨折のリスクを高めることが知られており、ビタミンK1を多く含む緑黄色野菜、ビタミンK2を多く含む納豆を積極的に摂取しましょう。

 

 

今回の食事管理のポイントは、アスリートに限らず全ての女性に有用です。
緊急事態宣言下、自宅で食事される機会が増えた方も多いかもしれません。
これを機会に、日頃の食生活を見直し、バランスのとれた食事を心掛けましょう。