院長コラム

女性のライスステージと睡眠の質

「寝つきが悪い」「夜中目が覚めてしまう」といった不眠は、妊婦さんや更年期女性によくみられます。
実は、性成熟期女性の場合も、月経周期によって睡眠の質に違いがあるそうです。
今回は「よぼう医学」(2025年新年号)の「睡眠学入門」を参考に、女性ホルモンと睡眠の質について情報共有したいと思います。

月経前や月経期は睡眠の質が低下
排卵後、黄体という組織から黄体ホルモンが分泌され、子宮内膜を妊娠しやすい状態に変えたり、基礎体温を高めるなど、妊娠に適した体に変化させます。実はこの時期、黄体ホルモンの影響で睡眠が浅くなり、日中の眠気が強まる傾向があるようです。
また、月経前は女性ホルモンの急激な低下などが原因で様々な心身の不調(月経前症候群:PMS)をきたすことがあり、それも不眠の要因になる可能性があります。
月経時は、経血量が多い方の場合、鉄欠乏性貧血になってしまい「むずむず脚症候群」が悪化し、良眠を妨げる可能性があります。

妊娠中になりやすい睡眠障害
妊娠初期は“つわり”や妊娠に対する不安感が強く、妊娠末期は胎動や子宮の圧迫感により、不眠を訴える方は少なくありません。
また、貧血に伴う「むずむず脚症候群」や脱水・ミネラル不足・血行不良などによる「こむら返り」も睡眠の質を低下させます。
尚、著しい睡眠不足や夜間の中途覚醒が多い妊婦さんは、産後うつのリスクが高まるため、注意が必要とのことです。

更年期障害でも多い不眠
エストロゲンの分泌低下や環境の変化などにより、多彩な更年期症状がみられますが、夜間に“のぼせ”“発汗”といった血管運動神経症状が激しいと、不眠になることが少なくありません。
一方、抑うつ症状や不安症状といった精神症状も、睡眠の質の低下に関係していると思われます。
また、閉塞時睡眠時無呼吸は更年期になりやすいといわれており、他の更年期症状が軽いにも関わらず不眠症状が強い方は、睡眠時無呼吸外来などにご相談されてもいいでしょう。

女性ホルモンに関連して、女性のライフステージには不眠になりやすい時期が多く存在します。
まずは内科や精神科のクリニックを受診され、それでもあまり改善しない場合には、産婦人科にご相談されてもいいかも知れません。
当院でも、睡眠状況をお伺いしながら、睡眠薬・女性ホルモン剤・漢方薬などを用いて対応して参ります。