院長コラム
女性のライスステージと心身の不調
女性はエストロゲンという女性ホルモンの分泌状況によって、およそ5つのライフステージに分かれます。
エストロゲン分泌前の小児期、エストロゲンの分泌が始まる思春期、分泌が安定する性成熟期、分泌が急激に低下する更年期、エストロゲンが低値安定する老年期、の5つです。
今回は思春期から老年期にかけての心身の不調や気になる疾患について情報共有したいと思います。
思春期のトラブル
8歳頃からエストロゲンの分泌が増加し、平均12歳頃に初経がみられます。
月経が始まると、月経時の下腹部痛・腰痛、頭痛、下痢、抑うつ、いらいらなど、月経困難症を認める方も増えていきます。
また、初経から数年経過した14~15歳になると、月経前の抑うつ、いらいら、乳房痛、便秘、浮腫といった月経前症候群を認める方もいらっしゃいます。
性成熟期のトラブル
エストロゲン分泌が安定してくると、月経困難症が軽快する方もいらっしゃいますが、子宮筋腫・子宮内膜症・子宮腺筋症などの婦人科疾患に伴う月経困難症・過多月経・過長月経をきたす方もいらっしゃいます。
妊娠される方の中には、妊娠・出産に伴う様々な体調不良や、お産後の急激な女性ホルモンの低下などによる抑うつ症状などがみられる方の少なくありません。
ちなみに、子宮頚がんや性感染症が増加するのもこの時期です。
更年期のトラブル
40代に入るとエストロゲン分泌が揺らぎながら低下します。
その影響で、ほてり・発汗、不眠、動悸、抑うつ、不安感、肩こり、腰痛といった更年期症状が出現することも多く、生活に支障をきたす更年期障害に悩まれる方も少なくありません。
尚、閉経前にエストロゲン分泌が一時的に増加し、過多月経をきたして鉄欠乏性貧血がみられるケースもあります。
老年期のトラブル
エストロゲンには、骨を丈夫にする作用や血管をしなやかに保つ作用がありますが、エストロゲン分泌が低下している老年期には、骨粗しょう症、動脈硬化などに注意する必要があります。
また、外陰部のかゆみ、灼熱感といったGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)も増えていきます。
更に、加齢に伴う虚弱(フレイル)に注意が必要な時期でもあります。
エストロゲン分泌の状況が心身の不調をきたしている場合は、様々なホルモン剤を適切に使用することが大切です。
その他、漢方療法は女性の生涯を通じて、大変有能な治療法です。
思春期以降の女性は、是非産婦人科のかかりつけ医を作って、それぞれのライフステージ特有の心身のトラブルについて、ご相談してみて下さい。