院長コラム
女性のメンタルヘルスに与える漢方薬
女性ホルモンの変動は、女性のメンタルヘルスに大きな影響を及ぼします。
特に、女性ホルモンの低下が原因の一つである、月経前症候群(PMS)や更年期障害に悩まされている女性は多いのではないでしょうか。
これらに対して、女性ホルモン製剤を用いた治療が一般的ですが、ホルモン剤だけでは精神症状への効果が不十分である事も少なくありません。
そのようなケースには、様々な漢方薬がよく用いられます。
今回、不安感や抑うつ感が強い方に処方することが多い加味逍遙散(カミショウヨウサン)と加味帰脾湯(カミキヒトウ)について、株式会社ツムラさんの資料を参考に情報共有したいと思います。
精神神経症状に関与する脳内神経系
不安感、抑うつ感などの症状は、脳内にある様々な神経系が関係しているそうです。今回は代表的な3つについて触れます。
・セロトニン神経系:セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれており、分泌量が低下すると、不安症状や抑うつ症状が出現します。
そのため、セロトニンの分泌量を増加させる向精神薬は、抗不安作用や抗うつ作用を発揮します。
・GABA神経系:GABAは、GABA受容体(受け皿)に結合して、抗不安作用などの効果を発揮します。そのため、GABA分泌量が減少すると、不安感や恐怖感が強くなることが知られています。
もし、GABA受容体を刺激することができれば、不安感の軽減が期待できます。
・オキシトシン神経系:オキシトシンは分娩や授乳に欠かせない物質ですが、社会性行動(絆など)・ストレス緩和・抗不安作用・抗うつ作用など、精神症状にも良い影響を及ぼします。
加味逍遙散の働き
加味逍遙散は、多彩な精神症状をきたすPMSや更年期障害の方に使用することが多い漢方薬です。
添付文書には、体質が虚弱で、精神不安などの精神神経症状に効果があると記されています。
加味逍遙散の成分は、セロトニンやGABAの受容体を刺激し、セロトニン神経系やBABA神経系などを活性化させて、抗不安作用や抗うつ作用を発揮するといわれています。
加味帰脾湯の働き
加味帰脾湯は、疲労感や抑うつ症状が強い方に使用されることが多い漢方薬です。
添付文書には、虚弱体質の方の不眠症・精神不安・神経症に効果があると記されています。
加味帰脾湯の成分は、オキシトシンの受容体を刺激するだけでなく、オキシトシンの分泌自体も促進し、オキシトシン神経系を活発にさせるそうです。その結果、抗不安作用、抗うつ作用などの効果が期待できます。
PMSや更年期障害の治療は「女性ホルモン製剤」と「漢方薬」の二本柱で行われることが多いと思います。
特に、女性ホルモン剤の効果が不良の方や、女性ホルモン剤が禁忌の方にとって、いかに漢方薬を治療に取り入れるかが重要です。
当院では、加味逍遙散、加味帰脾湯はじめ、お一人おひとりの症状や体質に合った漢方薬を使用することで、皆様の生活の質の向上に貢献できればと考えています。