院長コラム

人間関係によるイライラや不安感に対する漢方薬

最近はリアル社会でのイジメだけでなく、SNS上の誹謗・中傷が大きな問題となっています。
健全な議論や指導ではなく、悪意に満ちた人間関係で精神的なダメージを受けている方も少なくないのではないでしょうか。
今回は、傷ついている方が行き詰った心を開放し、気持ちを落ち着かせる漢方薬について、「phil漢方 no.101」の漢方臨床レポートを参考に情報共有したいと思います。

抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)=“傷つけられた人たちの「味方」”
抑肝散(ヨクカンサン)は、体力が中等度の方で、神経過敏で興奮しやすく、怒りやすい、イライラする、眠れないなどの精神症状を訴える場合に用いることが多い漢方薬です。ただし、効果が強い反面、長期の服用で胃腸症状を認める方もいらっしゃいます。
そこで、比較的体力が低下している方で、胃腸が弱く、慢性的に経過している場合には、胃腸に優しい抑肝散加陳皮半夏を持続的に服用して頂きます。
とある漢方専門医の著書の中に「抑肝散加陳皮半夏は“傷つけられた人たちの味方”」との記載があるそうです。
イライラが表に出る方だけでなく、心の奥底に怒りの気持ちを押し込めている方にも有用かもしれません。

半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)=“気分のふさぎ”や“不安”を鎮める
半夏厚朴湯は、体力が中等度以下の方で、喉が塞がる感じ(ヒステリー球)がみられる場合に処方する、抑うつ感、不安感の代表的な漢方薬です。
また、神経性胃炎、つわりにも保険適応があるため、妊婦さんの消化器症状に用いる事もあります。
今回参考にした漢方臨床レポートによると、抑肝散加陳皮半夏と半夏厚朴湯との併用は、自分の言葉で自分を表現しやすくさせ、心を開き不安を鎮める効果があるようです。
患者さんが疲れ切っていない限り、この両者の相性は良いようで、2剤を併用している患者さんの多くが「心が楽になった」とのことです。

“傷つけられたら牙をむけ 自分を失くさぬために”との歌が平成初期にヒットしました。
令和の時代は、人間関係で傷ついた方々にとって、自分自身のために怒りや不安を鎮め、適切に自己表現することが大切かもしれません。
抑肝散加陳皮半夏・半夏厚朴湯などの漢方薬が、その一助になればと思います。