院長コラム

ホルモン補充療法(HRT)で用いる黄体ホルモン製剤は天然型がお勧め

閉経前後は卵巣からのエストロゲン分泌低下に伴い、様々な更年期症状がみられます。
更年期障害に対する治療として、エストロゲンを補充する治療が主流になりますが、子宮を有している方にエストロゲン製剤のみを投与すると、子宮体がんの発症リスクが増大します。
今回は、HRTの際、子宮体がん発生予防に用いる黄体ホルモン製剤について、説明致します。

合成型VS天然型
黄体ホルモン製剤には合成型と天然型の2種類があり、実際にHRTで使用されている経口製剤は、合成型の「プロベラ錠・プロゲストン錠」「デュファストン錠」、天然型は子「エフメノカプセル」です。
「ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版」によると、「プロベラ錠・プロゲストン錠」は天然型に比べて子宮内膜増殖抑制作用が強いとのことですが、適正量を服用すれば、黄体ホルモン製剤3種類の子宮体がん予防効果には差がないようです。
ただし、乳がんに対するリスクについては種類によって異なり、「プロベラ錠・プロゲストン錠」はやや高く、「デュファストン錠」も若干あるようですが、「エフメノカプセル」にはリスクは見られません。

エフメノカプセルにはメンタル不調の改善作用も
天然型のエフメノカプセルには、脳内の睡眠をつかさどる部位に働きかけ、睡眠の質を上げる効果も知られています。
また、不眠に対する効果以外にも、抗不安作用や抗うつ作用など、メンタル不調の改善効果に関する報告もあるそうです。
ちなみに、服用後に眠気、めまいなどが起きる可能性が高いため、就寝前の服用が望ましく、エフメノカプセルを服用した後は車の運転を避けるようにしましょう。

以前は、合成型の「プロベラ錠・プロゲストン錠」が主役で、天然型に近い「デュファストン錠」が推奨されていた時代もありましたが、現在更年期障害に対して保険適応がある黄体ホルモン製剤は「エフメノカプセル」のみです。
当院では、エストロゲン製剤の内服薬(ジュリナ錠)や経皮剤(エストラーナテープ、ル・エストロジェル、ディビゲル)の“相方”として、エフメノカプセルを第一に考えており、出血や眠気などが強い場合は、合成型へ切り替えることもあります。
ただし、どの黄体ホルモン製剤を用いたとしても、HRT施行中は定期的な乳がん検査や子宮体がん検査は必要である旨、ご了解下さい。