院長コラム
エストロゲンが女性の体を守っている
10歳前後になると、卵巣にある卵胞という組織からエストロゲン(卵胞ホルモン)という女性ホルモンが分泌され始めます。
思春期にその分泌量は急増し、性成熟期は高値で安定していますが、40歳頃から減少し始め、更年期には急減し、閉経後は同世代の男性の10%程度にまで落ち込んでしまいます。
今回は、エストロゲンの代表的な作用について説明します。
受精卵が着床しやすいように子宮内膜を厚くする
月経が終わる頃、脳下垂体から卵胞を刺激し大きくするホルモン(FSH)が分泌され、その影響で卵胞が成長し、エストロゲンの分泌が増加します。
エストロゲンには、受精卵が着床しやすいように子宮内膜組織を増殖させて、内膜を分厚くさせる作用があります。
もし、受精卵が着床せずに妊娠に至らなければ、子宮内膜組織が剥がれて、血液とともに流れ出ます。この現象が月経です。
骨を強くするため骨密度を高める
骨の組織は、骨芽細胞により新しく作られ(骨形成)、破骨細胞により壊される(骨吸収)、といったバランスを取りながら健康を保っています。
しかし、破骨細胞の作用が強すぎると、骨が過剰に壊されてしまい、骨密度が低下して骨粗しょう症という病気となり、骨折・寝たきりになってしまう危険性が高まります。
ちなみに、20歳頃が人生における骨密度のピークであり、40歳頃まで横ばい、その後はエストロゲン分泌の減少に伴い低下していきます。
皮膚や血管の弾力性などを保つ
エストロゲンには、皮膚のコラーゲンを増やして、潤いや張りを保つ作用があり、その結果見た目が若々しくなります。
また、血管を取り巻いている筋肉の緊張を和らげ、血管を拡張させて弾力性を保つ作用があり、高血圧による動脈硬化などを防いでいます。
つまり、エストロゲンにより、見た目や血管が若々しく保たれています。
その他、関節の動きをスムーズにする、自律神経のバランスを整える、血中コレステロールを調節するなど、エストロゲンは全身の組織に様々な影響をもたらします。
逆に言えば、エストロゲンが減少すると、心身に様々な悪影響がみられることになります。
月経前・分娩後・更年期といったエストロゲン分泌が低下する時期に、様々な症状で辛い思いをされている方は、是非婦人科を受診してみて下さい。