院長コラム
エストリオール錠の使用について
体内に存在するエストロゲンという女性ホルモンには、E1~E4までの4種類が存在します。
そのうち、更年期障害や閉経後骨粗しょう症の治療目的で行われるホルモン補充療法(HRT)には、基本的にホルモン作用が最も強いE2:エストラジオールが使用されます。
今回は、ホルモン作用が比較的おとなしく、萎縮性腟症などに使用することが多いE3:エストリオールについて、当院での使用法を交えながら情報共有致します。
経口薬と経腟薬
E3には経口(内服)薬と経腟(腟内挿入)薬の2つのタイプがあります。どちらも「腟炎(高齢者、小児および非特異性)、子宮頸管炎並びに子宮腟部びらん」に保険適応があり、その他に経口薬には「更年期障害、老人性骨粗しょう症」にも適応があります。
当院では、どちらの製剤も萎縮性腟症に対して使用することが多いですが、E2を用いたHRTで不正出血や乳房緊満感が認められる方で、ご本人がHRTの継続を希望される場合は、E2をE3の経口薬に変更してHRTを継続することもあります。
萎縮性腟症・ペッサリー使用中の使用法
血中エストロゲン濃度の低下や加齢が原因の萎縮性腟症には、E3製剤が有効と言われています。
また、骨盤性器脱や子宮下垂などに対して「ペッサリー」を腟内に入れている方は、腟壁がペッサリーの刺激を受けて炎症を起こし出血や帯下をきたすことがあるため、その治療・予防のためにE3製剤を使用する事があります。
ただし、ご自身でE3製剤を腟内に入れることが困難な方は、医師が挿入するため頻回に受診する必要があります。
そのような場合、当院では来院時に医師が腟錠を挿入しますが、その際にE3内服薬も処方し、ご来院されない期間は患者さんに服薬して頂くことにしています。
E3内服薬の注意点
E3は子宮内膜組織に対する作用はほとんどなく、特に腟錠では子宮内膜を増殖させることはありません。
ただし、長期間内服薬を服用した場合、子宮内膜がんが認められた、との報告があり、子宮体がん予防のために黄体ホルモン製剤(プロベラ錠、エフメノカプセルなど)併用の必要性が議論されています。
当院では、子宮を有している萎縮性腟症やペッサリー留置の方にE3内服薬を使用する場合は、数週間から1か月間までの服用とし、症状に合わせて断続的にE3製剤のみ処方しています。
一方、HRTとしてE2の代わりにE3を年単位の長期投与する場合には、黄体ホルモン製剤を併用し、定期的に子宮内膜細胞診や超音波検査を行っています。
実は、E3製剤は欧米ではあまり使用されていないそうで、わが国でのガイドラインでも黄体ホルモン製剤の併用に関しては、はっきりしていない点があります。
ただし、E3製剤は効果はマイルドですが副作用が少なく、使用しやすいホルモン製剤の一つであることは間違いありません。
今後も当院では、患者さんと相談しながら、中高年女性のQOL向上にE3製剤を活用して参ります。