院長コラム

“イライラっ”とした時の漢方薬

先日、漢方薬のセミナーがあり、漢方療法に造詣の深い産婦人科医、精神科医、内科医の先生方の実践的なお話を伺ってきました。
当院でも漢方薬を処方していますが、新しく学ぶ事が多く、大変勉強になりました。
今回は、産後・月経前・更年期などにみられる「いらいら」に対する漢方について、セミナーの内容も交えながら情報共有したいと思います。

虚弱な方の“イライラ”には「抑肝散」「抑肝散加陳皮半夏」
比較的体力が低下している方のイライラに対する代表的な漢方は、抑肝散(ヨクカンサン)です。特に、抑うつや不眠がみられる場合に有効のようです。
例えば、育児などでイライラしてしまい、ついつい声を荒げてしまったものの、その後に後悔で気分が落ち込んでしまうような自己肯定感が低い「内向きのイライラ」の方には、抑肝散を屯用で服用されるといいでしょう。
ちなみに、抑肝散には即効性はありますが、胃腸の負担になる方もいらっしゃいます。その場合、胃腸の弱い日本人向けに開発された抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)がお勧めです。陳皮と半夏が胃腸を守ってくれるので、慢性的なイライラや不眠に対して継続的に服用されるのがいいでしょう。

“イライラ”した気持ちを人に話したい方は「加味逍遙散」
同じ虚弱な方でも、イライラ、不安、抑うつ、不眠といった様々な精神症状に加えて、肩こり、冷え、ほてり、発汗、月経痛、便秘などの身体症状がみられる方には、加味逍遙散(カミショウヨウサン)がいいかもしれません。
特に、イライラした気持ちを家族や友人、あるいは医療従事者に話したい気持ちが強い「外向きのイライラ」の方にお勧めのようです。
ちなみに、当院では、お産後のイライラには「抑肝散加陳皮半夏」、月経前症候群(PMS)や更年期症候群のイライラには「加味逍遙散」を処方することが多いかも知れません。

体力がある方の“イライラ”には「柴胡加竜骨牡蠣湯」
上記3剤とは異なり、比較的体力のある方のイライラ、不眠に対しては柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ)がいいようです。
添付文書の効能には、高血圧症・動脈硬化症・慢性腎臓病が記載されており、このような内科合併症をお持ちの方でイライラなどの精神症状がみられる場合は、特に有用かもしれません。
ちなみに、当院での処方例はあまり多くありませんが、動悸や肩こりを伴う体格のいい更年期女性のイライラに使用しています。

漢方薬は、原則として食前または食間での服用が基本ですが、食事をした後に飲み忘れに気付いてしまうような事もあるかと思います。
また、1日3回服用が基本ですが、特に昼食前の服用が困難な方も少なくないかもしれません。
そのような場合には食後の服用でも問題なく、漢方薬の種類によっては1日2回の製剤もありますので、診察の際お気軽にご相談下さい。