院長コラム
「緊急事態宣言」発令後の精神的ストレスに対する漢方薬
2020年4月7日、「緊急事態宣言」が発表され、今後約1か月は不要不急の外出を自粛し、自宅で過ごすことが余儀なくされます。
これまでも、東京都知事からの要請にしたがい、約2週間にわたって外出を自粛されていた方も多いのではないでしょうか。
先行き不透明な中、今後は不安感、いらいら感などのケアも重要になると思われます。
今回は、このような精神的ストレス対策として、いくつか漢方薬をご紹介します。
主に不安感が強い方
○「加味逍遥散」
「ご自身やご家族が新型コロナウイルスにかかるのではないか」、「仕事や学校はこれからどうなるのか」など、不安感が強く、生活に支障をきたしている方もいらっしゃるかもしれません。そのような方には「加味逍遥散」をお勧めします。加味逍遥散は、精神症状が強い更年期障害や月経前症候群などに用いることが多く、比較的服用しやすい漢方薬です。
○「加味帰脾湯」
不安焦燥感があり、抑うつ傾向を認め、心身ともに疲れているのに眠りが浅い方には、「加味帰脾湯」を用いることがあります。加味帰脾湯には、抗うつ作用、抗不安・鎮静作用、抗ストレス作用などがあり、胃腸を元気にして気力をつけるともいわれています。
○ 「半夏厚朴湯」
不安感が強く、のどに物が詰まったような感じがする方や、抑うつ傾向が強く、動悸などパニック症状を認める方には「半夏厚朴湯」をお勧めします。半夏厚朴湯は妊娠悪阻、神経性胃炎に対して用いることもあり、顆粒状の薬剤が苦手な方には、錠剤タイプを処方することも可能です。
主にいらいら感が強い方
○ 「抑肝散」「抑肝散加陳皮半夏」
いらいらを抑える代表的な漢方は、「抑肝散」、「抑肝散加陳皮半夏」です。通常は「抑肝散」を処方する事が多いですが、胃腸が比較的弱い方には「抑肝散加陳皮半夏」を用います。
自律神経のうち、気持ちを落ち着かせる副交感神経の作用が低下し、気持ちを高ぶらせる交感神経の作用が相対的に亢進している状態の方に、「抑肝散」「抑肝散加陳皮半夏」は有効といわれています。
例えば、比較的体質が虚弱な方で、ストレスがかかった時には落ち込むことが多いものの、突発的にいらいらし、怒りっぽくなるタイプにお勧めです。
○ 「柴胡加竜骨牡蛎湯」
一方、気持ちを落ち着かせる副交感神経の作用は変わりませんが、気持ちを高ぶらせる交感神経の作用が、絶対的に亢進している状態の方に有効といわれているのが「柴胡加竜骨牡蛎湯」です。
例えば、比較的体力がある方で、ストレスがかかった時に落ち込むことはほとんどなく、常にいらいらしているような方にお勧めです。
今回挙げた漢方薬以外にも、精神症状に効果のある漢方薬は数多くあります。
ストレスによる精神症状が、漢方薬によって軽減できるかもしれません。
ご希望の方は是非ご来院下さい。