院長コラム

「妊婦さんへの支援給付」 条件によって流産・人工妊娠中絶の方も対象に

子ども家庭庁が推進しています「妊婦のための支援給付」が新たに制度化され、令和7年4月1日から流産・死産・人工妊娠中絶の方も、胎児お一人に対して5万円給付されるようになりました。
ただし、妊婦支援給認定における「妊娠」の定義が、「医師による胎児心拍の確認」となっています。
今回は、こども家庭庁の資料を参考に、流産・人工妊娠中絶の方に対する「妊婦のための支援給付」について、ポイントを情報共有したいと思います。

流産の方の場合
1回でも超音波検査で胎児心拍が確認された後、残念ながら流産となってしまった方の場合、給付の対象になります。
ただし、胎嚢(胎児が入っている袋)は確認できたものの、一度も胎児心拍が認められなかった場合や、異所性妊娠(子宮外妊娠)の場合は給付の対象外となります。
尚、住民票所在の自治体に妊娠届を出されて、母子手帳を受け取られた方は、その時点で支援給付を申請されていると思いますので、その後の妊娠経過を問わず給付金が支給されます。
ただし、妊娠届けを出される前に流産となってしまった方は、自治体への申請の際に、医師による「妊婦給付認定用診断書」(当院では診断書料5,500円となります)の提出が必要になります。
該当される方は、「胎児心拍を確認された医師」(必ずしも流産と診断した医師や、流産手術をされた医師とは限りません)にご相談下さい。

人工妊娠中絶の方の場合
様々な事情により人工妊娠中絶をされた方も、胎児心拍が確認された場合は給付対象になります。
多くの方の場合、中絶処置前に自治体へ妊娠届けを出すことはせず、処置後に給付申請をされると思います。
その際は、流産の方と同様に「妊婦給付認定用診断書」が必要ですので、「胎児心拍を確認された医師」(多くの場合は中絶処置を行った医師と思います)にご相談下さい。
尚、人工妊娠中絶の方法が手術であっても、中絶薬内服であっても対象になります。
ちなみに、人工中絶処置は医学的に適した時期に行うため、心拍を確認する前に処置を行った場合は支援給付の対象外となる旨、ご了解下さい。

「妊婦のための支援給付」は、妊婦さんの身体的・精神的・経済的負担を軽減することを目的に制度化されたようです。
ただし、令和7年5月時点では、4月に改定された内容が、すべての産婦人科施設に周知されているとはいえません。
そのため、「妊婦のための支援給付」に関してご不明な点がございましたら、ご自身の住民票がございます市区町村の保健所にお尋ね下さい。