院長コラム
「エクオール」の今後の可能性
先日、女性医学の第一人者である先生の講演会に参加し、婦人科疾患とエクオールについてのお話を伺いました。
エクオールとは、大豆イソフラボンが腸内細菌によって代謝された物質で、女性ホルモンの一種であるエストロゲンに似た構造をしています。
今回は、婦人科疾患の治療による副作用に対するエクオールの有効性ついて、講演や質疑応答の内容を参考に私見を述べてみたいと思います。
エクオールが持つ軽いエストロゲン作用
エクオールが持つエストロゲン作用の強さは自然のエストロゲンの1/100~1/1000程度と言われており、子宮などの生殖器や乳房以外の組織(血管、骨、皮膚など)を中心に作用を発揮します。
女性ホルモンの低下が要因である更年期障害に対し、エクオール服用が有効であったとの報告があります。
一方、乳がんに対しては、エクオールの服用が予防に繋がるとの報告もあります。
乳がん術後の内分泌療法による副作用対策
エストロゲンは乳がん組織を増殖させるため、乳がんの術後は卵巣や副腎・脂肪などから分泌されるエストロゲンを抑制する内分泌療法を数年∼10年行うことがあります。
その期間は、どうしても更年期障害様の症状がみられ、生活の質が著しく低下することから、その対応は大変重要になります。
これまでは漢方薬を用いる事が多かったのですが、最近は乳腺科の先生がエクオールを使用し、更年期障害緩和に有効であった、との症例報告も見られます。
子宮筋腫・子宮内膜症に対する偽閉経療法時の副作用対策
子宮筋腫・子宮内膜症はエストロゲンによって病状が悪化するため、卵巣からのエストロゲン分泌を抑制する「偽閉経療法」を行うことが少なくありません。
その結果、ほとんど方に更年期症状がみられ、症状が強い方には漢方薬を用いる事が多いのですが、効果が良好でないケースもあります。
現在のところ、このような方に対するエクオールの有効性についての報告はあまりないようですが、エクオールの持つ可能性について期待できると考えています。
婦人科関連の病気に対する様々な治療法が、近年進歩・発展を遂げてきました。
一方で、新たな副作用の出現により、その対応に苦慮することも増えてきたのかも知れません。
今後当院では、エストロゲン低下に伴う様々な場面で、エクオール(当院では「エクエル」を推奨)の使用を選択肢の一つとして、積極的に検討しようと考えております。