院長コラム

思春期女性の月経関連トラブルとその治療

多くの女性は10~15歳(平均12歳)頃、初めて月経を迎えます。
初経がみられてあまり間を置かずに、月経困難症・月経前症候群(月経中・月経前の様々な身体的、精神的症状)に悩まれている女性も少なくありません。今回は、昭和大学医学部産婦人科学講座 白土なほ子先生が監修された月経に関するパンフレット(富士製薬工業)を参考に、思春期女性の月経関連トラブルと当院における治療について情報共有致します。

勉強や運動に影響を与える症状
中学生・高校生の女子を対象に行った調査によると、7割以上の方が月経時の腹痛・頭痛・嘔気など月経困難症がみられ、勉強や運動に悪影響を与えているとのことです。
また、月経前のイライラ、不安感、抑うつ、乳房痛、頭痛といった月経前症候群についても35 %以上の方にみられた、と報告されています。
その他、25%の方が月経過多(レバー状の経血、日中に7セット以上の生理用品の使用など)、10%の方が月経不順(月経周期が24日以内または39日以上)に悩まれているそうです。

月経困難症に対する薬物療法
思春期女性の月経困難症に多いタイプが“機能性月経困難症”であり、明らかな原因となる病気がありません。子宮内膜から分泌される「プロスタグランディン」という物質の影響で子宮筋の収縮が過剰になってしまう事が、月経痛の原因と言われています。
プロスタグランディンの合成を阻害する鎮痛剤は非常に有用ですが、月経が始まる前から服薬を開始することをお勧めします。
また、子宮筋の収縮を和らげたり、骨盤内の血流を改善することで月経痛を緩和させる漢方薬が有効なことも少なくありません。
更に、プロスタグランディンの分泌を抑制するため、子宮内膜自体を薄くさせる「低用量ピル」「黄体ホルモン製剤」もお勧めです。

月経前症候群(PMS)に対する薬物療法
PMSの原因は未だに不明な点も多いですが、排卵後に分泌される黄体ホルモンの作用や、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの月経前の急激な低下による影響などが指摘されています。
そのようなPMSの治療として、イライラ、抑うつ、むくみなどの精神的・身体的症状に対して漢方薬が奏功することもあります。
また、月経困難症も合併しているのであれば、排卵を抑制し、黄体ホルモンを分泌させない「低用量ピル」が第一選択薬と考えられます。

中高生女子の中には、月経関連トラブルに関して、親御さんにお話することができず、お一人で悩まれている方も少なくないようです。
ただし、我慢ばかりしていると、勉強や部活、友人関係にも悪影響が出てしまう事がありますので、もしご家族に話し辛いのであれば、まずは学校の養護の先生にご相談してみてはいかがでしょうか。

もちろん、産婦人科クリニックは思春期女性の味方ですので、いつでもお気軽にご相談にいらして下さい。